龍白の眼青 ~名前の単語の順番について~【比較ポケモン生物学-7】

フルゥィィィィィドだ!アニマルゼミの時間だぜ。

今日は、有袋類のネズミカンガルーを見ていこう。

フサオネズミカンガルー 埼玉県こども動物自然公園

ネズミカンガルーはネズミのような顔と小さめの体が特徴のカンガルーの仲間だ。

ではここでクイズ。

次の内、ネズミカンガルーを表す言葉はどれかな?

A. rat-kangaroo

B. 鼠袋鼠

C. canguro rata

答えは、CMのあと!

 

こんにちは。二枚貝ホタテです。比較ポケモン生物学の第7回、テーマは生物とポケモンの名前、その単語の順番です。

 

まずは、こちらをご覧ください。(CV.宇都宮CEO)

 

ファイヤー使い友の会氏は、ンバヂ氏が投稿した好きな惣菜発表ドラゴンに注目し、ドラゴンと名前の最後に着けることでそういう性質のドラゴンであることを明示できること、そして遊戯王カードのブルーアイズホワイトドラゴンも動物のホワイトタイガーも種族名が名前の最後についていることに気が付いたようだ。勘のいいガキだ。あとで犬にしとこう。

 

↓ちなみに「好きな惣菜発表ドラゴン」を知らないはこちらをどうぞ

https://twitter.com/nbaji9/status/1702673342334148990

 

日本語と英語において、生物の名前はその種族名が最後に来る。言い換えると、修飾する単語が前、修飾の対象となる単語が後ろに来るのだ。

ブルーアイズホワイトドラゴンを例に見てみよう。

まず、ブルー。これはアイズについて説明する単語だ。目が青いというのは、最後にあるドラゴンの説明だ。そしてホワイト。これはドラゴン自体の体色を説明する。ブルーな色のアイズを持つホワイトな体色のドラゴンだ。

www.db.yugioh-card.com

いやあんまりホワイトじゃねぇな。

あと体がまぁまぁ水色のせいで目が青いのか分からん。

レシラムにその名前を譲れ。

ともかく、修飾する目的を矢印で示すと、

ブルー→アイズ

ブルーアイズ→ドラゴン

ホワイト→ドラゴン

となるわけだ。

 

ちなみに、好きな惣菜発表ドラゴンをもじって「好きなドラゴン発表惣菜」という動画も存在する。やはり語順において最後の単語がその正体を示していることが分かる。

好きなドラゴン発表惣菜 / さとうささら - YouTube

 

次に、複数の単語から構成される動物の名前を見ていこう。

例えばトラザメ(Scyliorhinus torazame)。トラザメはサメだ。間違ってもトラではない。英語ではCloudy catsharkという。トラじゃねぇのかよ。まぁ、どちらにせよ名前の最後にサメ、sharkがついており、サメの仲間であることを伝えている。説明する単語が前、説明される対象の単語が後ろ。ゆえに、一番最後に来る単語がその名詞の本質を表す言葉となる。これが日本語と英語を問わない、生物名のルールである。

 

さて、日本語と英語を見てきたが、中国語はどうだろう?トラザメの中国語名は虎纹猫鲨だ。トラとネコ両方採用するんかい。最後の鲨という字は、日本ではハゼを指すこともあるが、中国語、ならびに昔の日本ではサメを指す漢字だ。やはり、サメは最後に来ていることが分かる。

 

トラザメはいるがサメトラはいない。残念。そこで、2種類の動物名からなる名前で、かつ、2種類をひっくり返しても動物名になる生物がいないか探した。

 

いた。

 

ネズミカンガルーとカンガルーネズミだ。

ネズミカンガルーはオーストラリアに生息する有袋類。カンガルーの仲間だが、ずんぐりとした体と、ラットのような尖った鼻先の顔が特徴だ。

フサオネズミカンガルー 埼玉県こども動物自然公園

カンガルーネズミは北米に生息する齧歯類。ネズミの仲間で、大きく発達した後ろ足を使って飛び跳ねる。その姿はまさにカンガルーそのものだ。

国立科学博物館 大哺乳類展3 オルドカンガルーネズミの頭骨

ネズミカンガルーもカンガルーネズミも、やはり名前の最後にある種族名がその動物の正体である。ネズミカンガルーはカンガルーだ。カンガルーネズミはネズミだ。では、英語ではどうだろう。

ネズミカンガルーの英名はrat-kangaroo(ハイフンがつくときとつかない時がある)で、カンガルーネズミの英名はkangaroo ratだ。ネズミの部分がratに置き換わっただけで、日本語とほぼ一緒といえるだろう。

次に中国語。まずはネズミとカンガルーの中国語名をおさえよう。ネズミは鼠だ。これは日本でもたまに見かける漢字だな。窮鼠猫を噛む、とか。次にカンガルーだが、ネットで「カンガルー 中国語」とか「kangaroo 中文」で検索すると袋鼠と表示されるではないか。そう、ネズミは鼠、カンガルーは袋鼠だ。なお日本語でフクロネズミというとオポッサムという有袋類のことを指すことが多い。

ではネズミカンガルーとカンガルーネズミをなんというのだろう。

ネズミカンガルーは鼠袋鼠だ。うぉぉぉ!ネズミでサンドイッチしている!マウストゥマウス!

そしてカンガルーネズミは・・・更格卢鼠。

いや袋鼠鼠じゃねぇのかよ!更格卢て!ちなみに卢は盧(めしびつ)という字を簡単にしたものだという。更格卢の当て字でカンガルーという読みを表している。

ともかく、ネズミカンガルーとカンガルーネズミは、どちらも中国語でも同じ語順だ。

 

でもって、次はスペイン語に注目しよう。

まずはネズミカンガルー。カンガルーの方だな。これをスペイン語で言うと・・・

canguro rata

・・・おや?先にカンガルーっぽい単語が来て、後ろにrata、つまりラットが来てる。

そしてカンガルーネズミ。ネズミの方だがこっちは・・・

rata canguro

・・・おやおや?先にネズミが来てるじゃないか。

そう、スペイン語は順番が逆で、本質となる単語が最初、その説明となる単語が後ろにつくのだ。

スペイン語では形容詞が大抵名詞の後ろにつく。ネズミカンガルーの仲間にアカネズミカンガルーという種がいる。スペイン語ではcanguro rata rojizoといい、最後のrojizoは赤みを帯びたという意味の形容詞だから、そのままの順番で訳すと「カンガルーネズミアカ」だ。

 

ついでにブルーアイズホワイトドラゴンもスペイン語に翻訳しよう。

Dragón Blanco de Ojos Azules

Dragónはもちろんドラゴン。スペイン語では後ろから2番目の母音にアクセントが来るのだが、そうでない場合はアクセント記号がつく。Dragónの場合、oにアクセントを持ってくるわけだ。Blancoは白いという形容詞。白ワインはvino blancoである。〇〇 de××は英語でいうところのof、つまり××の○○だ。Ojoは目、Azuleは青で、目は2個あるので複数形になっている。deは無視して単語の出てきた順番に翻訳すれば、「龍白目青」となる。ドラゴンが白目をむくほど真っ青ということだな。えげつないビビッドな青だ。

スペイン語ラテン語が由来となっており、ロマンス諸語といわれる。同じ由来を持つ兄弟、フランス語やイタリア語もきっと同様のルールを持つことだろう。

ということで、言語によって単語の順番が大きく変わることが分かった。長かったが、いよいよポケモンの名前を見ていこう。

まずは日本語名。ポケモンの日本語名は生物の日本語名同様に種族名が最後に来るパターンとして、ヒトカゲヤミカラス、ナミイルカなどがある。特にサルっぽいポケモンはその傾向が強く、オコリザルヒコザルモウカザルゴウカザルナゲツケサル、コノヨザルなんてのがいる。

かと思ったら、逆に名前の前の方に種族名が来るポケモンもいる。

サル系ポケモンでいえばエテボースやサルノリ、ゴリランダー。ちなみにサルのことをエテ公という。去る→いなくなるという縁起の悪い言葉から、得るに変えた験担ぎだ。

興味深いのがゼニガメカメールカメックスだ。カメが前に移動してるではないか。

このゼニガメ系統、英語名だと必ずカメ要素が最後に来るようになっている。

 

それぞれ、Squirtle、Wartortle、Blastoiseだ。カメは英語でturtle、リクガメはtortoiseという。それぞれゼニガメはスカート(水鉄砲)+タートル、カメールはウォーター+タートル、カメックスはブラスト(噴出)+トータスになっている。

中国語(簡体字)なら杰尼龟、卡咪龟、水箭龟だ。やはり亀が最後。

スペイン語は・・・ポケモンの名前は原則英語と同じである。ということで、日本語のカメールカメックスだけルールを無視した、種族名先頭ということだ。なんてこった。

さて、考察していこう。まずは中国語だけが持つ特徴に注目する。漢字だけが持つアビリティがある。憑依能力、ウソです、表意文字だ。ひらがな、カタカナ、アルファベットは音だけを意味し、文字自体に意味はない。「あ」や「ア」に意味がない。"A"も、不定冠詞にはなるが、不定冠詞だって意味がある言葉ではない。でも、「阿」はおもねるという意味があるし、「亜」は次点の、みたいな意味があったりする。亜熱帯とかね。それを踏まえてゼニガメ系統の名前を見てみよう。

杰尼龟、卡咪龟、水箭龟

ゼニガメはゼニみたいな音になる杰尼に亀をつけ、

カメールはカメみたいな音になる卡咪に亀を付け、

前半は漢字の意味ではなく読み方を使った音の当て字、後半はカメだ。

カメックスは水の箭に亀を付けている。

箭は矢のことだな。

つまり、最後に亀の字をつけ、どんな亀、という説明になっている。

漢字ならたった1文字で亀という属性を表すことができるのだ!

なるほど~中国語は日本語と同じように生物名が最後なんだなぁ。

当ブログの比較ポケモン生物学では、第5回、第6回、今回と様々な生物の海外言語名称を見てきた。第5回ではヘイガニシザリガーとエビ類について、第6回ではバイソンとバッファローについて考えてきた。いやぁ懐かしいなぁ。ヘイガニシザリガーの中国語調べたら龍が入ってたんだよ。シザリガーが鐵螯龍蝦で、後半3文字がロブスターのことだったな。で、ヘイガニはたしか龍蝦小兵で龍蝦がイセエビのこと・・・

イセエビが先!?

さぁ、ここからは読者の皆様の番だ。自分の推しポケの名前を調べてみよう。種族名の単語は、名前の最後かな?そこにどんな意味が込められているのかな?言語によって法則性はありそうかな?

ここからの研究は読者の皆様に任せよう。ボン・ボヤージュ。

 

 

バッフ論?バイソンとバッファローは同じ動物か違う動物か【比較ポケモン生物学-6】

どうも~ モーモーミルクボーイです~

あ、ありがとうございます~

今、お客様から、ジガルデ・セルをいただきましたけども

こんなんなんぼあってもいいですからね

 

あのな、オカンが、好きな動物がいるらしいねん

ほう、好きな動物

でも、その好きな動物の名前を忘れたらしいねん

オカン好きな動物の名前忘れたん?どないなっとんねん

僕が一緒に考えてあげるから、どんな特徴言ってたか教えて

オカンが言うには、アメリカとかヨーロッパの比較的寒い地域にいる、頭の周りに毛が生えてる、大型のウシ科動物らしいねん

ほなバイソンやないか

その特徴はバイソンで決まりやな

アメリカバイソン 東武動物公園

でもオカンが言うにはな、動物園で大人気の動物らしいんよ

ほなバイソンとちゃうなー

バイソンが動物園で人気なの見たことないねんから

上野動物園でバイソンの展示場の前にたくさん人がいるのは、みんなバイソンの前にいるプレーリードッグを見てるねん

バイソン見てる人なんかおらんのよ

バイソンはただでさえ大きいうえに、毛がボフボフに生えすぎててさらに威圧感がすごいねん

他に特徴言うてなかった?

オカンが言うには、お尻側だけ毛が短くて、上半身は服着てるけど下半身は裸みたいなスタイルらしいねん

ほなバイソンやないか

その特徴はバイソンで決まりよ

バイソンは頭と肩の周りだけやけに毛が生えてて、お尻の方は貧相なんよ

だから擬人化する時は注意しないと変態になってしまうねんから

くまのプーさん的変態ファッションスタイルを地で行く動物やねんから

もうバイソンで決まりやな

でもオカンが言うには、風邪薬の名前に似てるらしいねん

ほなバイソンちゃうな

バイソンは風邪薬じゃなくて、掃除機に似てる名前やねん

吸引力の変わらない、ただ一つの掃除機、それがダイソン

モフモフなのに人気ない、ただ一つの動物、それがバイソンやねん

風邪薬みたいな名前なのはバッファローなんよ

半分やさしさでできているのがバファリン

それに似ているのがバッファローやねん

そんで、半分だけ毛が生えてるのがバイソンやねんから

日本でバッファローといえば、いわゆる水牛のことを意味するねん

ただ、英語圏ではバイソンのことをバッファローと呼ぶこともあって、

混同されることがあるねん

でも日本では水牛のことをバッファローと呼ぶし、水牛は水に入るからモフモフではないねん

だから日本でバイソンのことをバッファローって呼ぶとどうしても違和感があんねんな

オカンもしかしてバイソンとバッファローを混同してるんちゃうの?

他に何か言うてなかった?

オカンが言うには、キン肉マンに、似た感じのキャラがいるらしいねん

それはどんなキャラよ

バッファローマンやねん

ほなバッファローやないか

バッファローマンはどう考えてもバッファローやないか

ちなみにバッファローマンのどこがその動物っぽいんよ

頭がパーマかけてるみたいにモコモコなところやって

ほなバイソンやないか

頭モコモコはバイソンの特徴なんよ

もはやバッファローマンではなくてバイソンマンなんよ

やられたらばいばいそ~んって言って飛んでいくタイプのマンなんよ

他にキャラクターの話してなかった?

ポケモンにもその動物に似ているのがいるらしいねん

なんてポケモンなん

バッフロンっていうポケモンなんやけど

ほなバッファローやないか

その名前はバッファローで決まりやないか

「バッフ」と「ロ」が一致しているんやからどう考えてもバッファローやな

そのバッフロンはどんなポケモンなん

頭がアフロになっててモコモコやねん

ほなバイソンやないか

その特徴はバイソンやないか

もうバッフロンじゃなくてバッイソンなんよ

これはもうみんなバイソンとバッファローが混同してるとしか思えないんよ

もう一度言うけども、日本ではバイソンとバッファローは一般的に別のウシ科動物やねん

バイソンはアメリカバイソンとかシンリンバイソンみたいな、頭と肩の周りに毛がボッフボフに生えているウシのことを指すねん

バッファローはアフリカスイギュウとかアジアスイギュウみたいな、スイギュウと言われるウシ科の動物のことやねん

スイギュウは水に入ることが多いからモフモフの体毛なんか生えてないねんな

でも英語圏ではBisonのことをBuffaloと呼ぶこともあるんよ

実際にAmerican bisonのウィキペディアを見ると

The American bison (Bison bison; pl.: bison), also called the American buffalo or simply buffalo (not to be confused with true buffalo), is a species of bison native to North America.

アメリカバイソンはアメリカンバッファローとも呼ばれ、または単にバッファローと呼ばれる、北米在来のバイソンの一種である』、って書いてあんねんから

せやからバイソンのことをバッファローと呼ぶことは、日本語ではおかしいけど英語では正しいってことになるねん

バッファローマンバッフロンも、見た目の特徴はバイソンで、名前はバッファローなのも、英語的には間違ってないねんな

ちなみにスイギュウは英語でなんていうか気になるところやけど、スイギュウは英語でWater buffaloやねん

ということでオカンはバイソンおよびバッファローが好きってことやねん

英語圏ではバイソン=バッファローだから、英語で考えてたってことにしておけば別にええねんな

でもオカンがいうには、バイソンでもバッファローでもないらしいねん

ほなバイソンでもバッファローでもないやないか

なんでそれ最初に言わんねん

オトンがいうには、ヌーちゃうかって

いや絶対ちゃうやろ

 

新宿ポケモン学会!? 学問バーKisi「ポケモンから見る学問・学問から見るポケモン」レポ

2023年12月22日、金曜日。17時。リモートポケモン学会学会員、二枚貝ホタテは都内某所、勤務しているオフィスにいた。今日は仕事でミスを2個ほどやらかした。定時を過ぎても部長の説教はやまない。今日のうちにやらなくちゃいけないことはいろいろあるけど、全部放り出して職場を後にする。

新大久保で山手線を降りた。駅の近くの見慣れぬ店でワッフルが売られている。やはり新大久保といえば流行りの軽食を買って食べ歩きだな。チーズコーンワッフルとやらがある。おそらく総菜クレープみたいな、そんなに甘くないやつだろう。今日の夕飯にしてみるか。

 

おいめっちゃハチミツかけてるじゃねぇかやめろやめろ俺の夕飯だぞ夕飯にハチミツかけんじゃねぇわしゃプーさんか

 

終わったわ

俺の夕飯

終わったわ

 

回避率が下がりそうなほど甘い香りがただようモチモチワッフルを片手に歩くこと10分弱。学問バーKisiを擁するビルについた。3割ほど残っているがもうすっかり飽きたワッフルを急いで口に放り込む。ハチミツで手がベタベタだ。ヒメグマか?

6時15分ごろだったか。ビルの5階、それらしき部屋に入る。下戸の私はバーなど初体験だ。奥のソファー席にちょっとだけチャラそうな団体と、バーカウンターに少し人が座っている。どこに座っていいか分からず一旦手を洗う。困惑して立ち尽くしていると、カウンターに座っていた人が席を案内してくれた。カウンターの一番奥に座る。先客が、フランス語版のキュウコンの名前がいかにうまい翻訳か、マスターらしき人物に滔々と語っていた。

マスターから話を振られる。

「もしかして研究者の方ですか?」

「いえいえ、自分は研究者でもなんでもなくて。今日の5つ目の発表でリモートポケモン学会ってあるじゃないですか。あれに興味があったんで来たんです。」

そう、この日私が学問バーKisiに来たのは他でもない、

オムニバス発表会「ポケモンから見る学問・学問から見るポケモン

を聞くためだ。

 

学問バーKisi(以下、Kisiと呼ぶ。)は研究者がバーテンダーとなり、客と対話するという一風変わった知的なバー。この日は研究者たちがポケモンに関する発表をするというイベントが開催されるのであった。

5つの発表の中には、発表者として2回携わったリモートポケモン学会の発表もある。本当なら、金曜日の夜はアニポケを見たくてすぐに家へと帰るのだが、リモポケ学会案件とあらば話は別だ。

マスターにリモートポケモン学会の話をすると、さっきまでフランス語の話をしていた人物が反応する。彼もまた、学会の登壇者だというではないか!

彼は自分と直接のやりとりがあまりないにもかかわらず当ブログに何度か登場しているカルフール氏。(勝手に登場させるんじゃない)第7回リモートポケモン学会の発表者で、フランス語への翻訳という観点からポケモンを調べている。

remopoke.com

(まぁフランス語のキュウコンの話している時点で予想はついていたけど)

リモポケ学会関係者と初めて直接お会いする。当たり前だけど、リモポケ学会関係者って実在するんだな。ずっとオンラインで顔が見えないから、ワンチャン人じゃないかもしれないと思っていたが、ちゃんと人間だった。

そんなこんなでなんやかんやで6時半。1つ目の発表が始まった。

 

1本目:ポケモンに生きる権利はあるか

最初は生命倫理のお話。ポケモンは「友達」なのか「道具」なのかを投げかける。初手から生命倫理は、重いよ。

ゲーム内では、ポケモンは友達という表現がある一方、サカキのようにポケモンを道具としてみるキャラクターもいる。生きる権利、換言すれば道具にされない権利について、発表者はパーソンという考えを紹介。発達した大脳と自我を持つ人間はパーソンであり、道具にされず生きる権利を持つという。そしてポケモンのなかでも人語を話すポケモンはパーソンであり、話すポケモンは皆ボールに入らず特別な扱いを受けている!たしかに!これはポケモン観が大きく変わる発見だ。

ポケモンは、そして生き物は友達か道具か。生物の生きる権利を認めれば問題が生じるが、かといって認めないわけにもいかない。というか、道具or友達に分類すること自体可能なんだろうか・・・?ポケモンを通して我々の世界の複雑さ、分けることの難しさを考えさせられた。

ちなみに動物だって人語を教えれば会話できないこともない。インコの仲間であるヨウムのアレックスという個体や、ニシローランドゴリラのココという個体だ。アレックスは英文法をしっかりと理解して質問に答えることができた。ココは手話を理解しコミュニケーションができた。会話できるポケモンもそんな感じなのかなぁ。

アレックスと同じ種、ヨウム ズーラシア

 

2本目:新ポケモン、ミミズズの生態に迫る!

(ややこしいからミミズとミミズズの色変えておくね)ミミズ研究者が、ミミズズと現実世界のミミズの共通点、相違点を紹介。生物にまつわる文化についても調べているという。ミミズズはたかさ2.5mだが、巨大なミミズはそれと同じくらいの長さになるんだとか。でもミミズって割と伸びたり縮んだりするし、長さってどう測るんだろう・・・。ほかにも、色違いのミミズズみたいに青いミミズがいるとか、トカゲみたいにしっぽを切る種類がいるとか。ポケモンの世界にちりばめられた細かすぎて伝わらないミミズ要素を丁寧に拾っていった。

自分も生物とポケモンの関係を調べているので、どストライクどころかどハッサムの発表である。

一応自分もポケモンと生物を比較する「比較ポケモン生物学」という記事を書いている身。ミミズズの考察について語らせていただきたい。ミミズとミミズズを比較するうえで重要なのは、ミミズズが狭い生物をモチーフとしているのではなくミミズ全体のイデアをモチーフとしていること。たとえばこれが「シボミミズズというポケモンで、明確にシーボルトミミズをモチーフとしています」だったら?シンプルにシーボルトミミズシボミミズズ(仮)の共通点と相違点を考えればいい。しかしミミズズはそうではない。ミミズという大きな分類群をポケモン化した存在なのだ。一般人からすればミミズという生物の解像度は低い。実際にはミミズの仲間と言ってもいろんな種類のミミズがいて、それぞれが違う特徴を持っているが、一般には知られていない。そこら辺を歩いている人に「犬の品種を5つ言ってください」といえば、多分1つ以上出てくるが、「ミミズの種類を5つ言ってください」と聞けば、1つも返ってこないだろう。知られていない多様なミミズの中には、ミミズズと特徴が被るものもいるだろう。でも、それは果たしてミミズズのミミズ要素といえるのか?ミミズの多様性が高すぎてたまたまかぶってるだけじゃないか?

まぁ、面白いから別にいいか!

印象に残っているのが、ソファ席に座っていたちょい陽キャっぽい人が、今までミミズとミミズズは気持ち悪いと思っていたが印象が変わった、ミミズズかわいい、シーボルトミミズきれいだと言っていた。やはりポケモンとそのモチーフを紹介することで、ポケモンと現実世界、双方の解像度が上がり、偏見を取り除き、新しい魅力に気づくことができる。こんな風に、聞いている人々に新しい気付きを与えるような、この世界の知られていない魅力を伝えられるような、そんな研究がしたいなぁ。

 

3本目:拡張される虚構世界:ポケモンと文学的想像力の交点

生物の話から一転、文学(哲学?)の話。フィクションより結局現実の方が大事、みたいな考えもあるが、虚構世界にもまだ見ぬ価値があるという。現実世界に普段気づかない魅力がある。例えるなら、いつも歩いている道に、今まで見たことのない店を発見するかのように。それと同じように、虚構世界の中にも潜在的な魅力が隠れているのだという。

なんかさっきのミミズズ陽キャの話とつながったな。彼もミミズズという虚構の魅力、そしてミミズという現実の魅力をはっけん!したのだから。

発表後、客から、「ゲームにバグを発生させ、要素をランダムにして遊ぶことは正しいのか?」という質問が出た。これに対し、ゲームの新しい楽しみ方を見つけるというのは虚構世界の拡張だという。虚構の新しい楽しみ方を塗り替えていく、というフレーズが、やけに心に刺さった。

ところで、リモートポケモン学会では様々な研究、時には妄想のプレゼンが行われる。これは拡張された虚構世界、新しく塗り替えられていく楽しみ方なのだろうか?基本的に自分がやっていることは、ポケモン世界の生物と我々世界の生物を比較するというものだ。これは虚構の話?現実の話?それとも、虚構と現実の間の話?虚構が現実を豊かにしているともいえる?

再び、フィクションより結局現実の方が大事だろうがという話。でも、虚構は現実を全然豊かにしてくれていると思う。発表者は実況者のもこう氏を例に出し、虚構世界に傾倒することが巡り巡って現実の生活を豊かにすることもあるという。ニコニコに尖った投稿をしていた氏について「もこう先生は現実を生きていない」とも言っていた。パワーワードすぎるだろ。

ちなみにこの時点でバーの中は満員、パイプイスすら足りなくなって、立ち見みたいな感じの人も出ていた。後からわかったが、発表した夢三先生の受け持つ学生さんが来ていたという。大学の先生、愛されてるなぁ。

 

4本目:現実世界の生物と「ポケモン」の比較、および「きのこポケモン」に関する考察

再び生物学の時間。この発表は大きく分けて2つのテーマからなり、まずはポケモンと生物の分類について。ポケモンには技を出したりボールに入ったりするといった共通点があり、生物学における共有派生形質と思われるため、真核生物ドメインの新しい生物分類、ポケモン界を設定するという内容だ。ポケモンだけど、ポケ門ではないのね。

そういえば、ゆるふわ生物学の配信で、ピクミンが属する分類、歩根類は界か?みたいな話題が出ていたのを思い出したり。

www.youtube.com

↑ 45:30くらいから歩根類の話

続いては発表者の専門分野、キノコに関するポケモンたち。キノコポケモンの図鑑説明にたびたび登場する、ほうしという存在が何なのかを考察していた。胞子が繁殖のためではなく武器として使われている傾向にあったり、図鑑説明に矛盾が生じていたりと、キノコ好きならではの新たな発見が興味深かった。図鑑説明にもいろんな読み方がある。同じポケモンの図鑑説明を、世代をまたいで縦に読んだり。共通項のあるポケモン同士の図鑑説明を比較して横に読んだり。自分はキノコの解像度が低いので、そこまで深く考察できず、さらっと読み流して終わっちゃうなぁ。図鑑説明の読み方の面白さを体感できるのも、ポケモンと生物の双方に興味のあるが発表してくれるおかげ、そして発表の場を設けてくれる人のおかげである。

 

5本目:ポケモンの学会!?:現役スタッフとリモートポケモン学会の魅力に迫る

時刻は10時過ぎ。いよいよお待ちかね、リポ学の発表だー!

と思いきや、ソファに座っていたちょい陽キャ風集団がお会計を始めた。もったいない!さすがに発表者のりーるさん(この日のHNはりゅうくさん)も、彼らがお会計をしている短い間にリモートポケモン学会の紹介と、次回の日付をしっかりと宣伝していた。えらい。

結局バーに残ったのは、二枚貝ホタテ、発表者でAIのりーるさん(りーるさんはAIではない)、フランス語のカルフールさん、同じくフランス語の使い手で途中から来ていた発表経験者のtats.tさん、他に女性のお客さんが一人と、バーのマスター、キノコポケモンの発表をしたXenonさんの7人。うち4人がリポ学関係者。過半数じゃん。ここでリポ学の宣伝してどうするんだ。

発表も最後となり、少人数でほぼ身内。かなり和やかなムードで、りーるさんも客もマスターも仲良くしゃべりながらりーるさんの発表を聞いていた。それまでの講演みたいに一方的に発表を聞くのも悪くない。だが、発表者と聴衆という立場の違いもなく、ダラダラと、和気藹々と、好きなポケモンや発表の思い出を語り合う時間。なんと落ち着くことか。

自分は、パルシェンの発表をしたとき、「アサリの前はどっちか」というクイズを出し、いろんな答えが返ってきたというエピソードを話した。なかなかクイズ出す機会ないし、ましてやいろんな答えをもらえる機会はなおさらないので、とても参考になる。

発表の中でりーるさんはリポ学の魅力として、生物学や語学や工学など、様々な切り口からポケモンを解き明かすことが面白いと言っていた。同感。多分自分も前にブログでそんな感じのことを書いた気がするレベル。ポケモンと、それにかかわる別の分野の双方に詳しい人が、その知識を生かしてポケモン世界の謎を解き明かしたり、逆に現実世界の魅力を伝える。それがリポ学の魅力だと思う。

 

スゴいなKisi 改めてスゴいなリポ学

リポ学発表経験者という立場でこのイベントに参加して思った、それぞれの長所と短所。

Kisiの方は、本当に学問に熱心に取り組んでいる方たちが話されていて、難しい内容ではあったが、その専門性の高さに感心した。逆に言えば、そんな方たちからも愛されるポケモンというコンテンツが如何に面白いか、いや、文学の夢三先生の言葉を借りるなら、「潜在的な魅力を秘めている」かを全身で浴びるように感じた。さすがだよ研究者。やっぱ最高だぜポケモン。そして研究者を集められるKisiという存在のありがたみよ。一方で、ポケモンに関する知識、ポケモンワールドの研究手法については、伸びしろがあると感じた。自分も決してポケモン学に秀でているわけではないから、お前ごときが言うなという話ではあるが、ポケモン側についての理解度が低かったり、ポケモンを考察する手法が甘いという印象。リポ学は「ポケモン好きが中心となって、ポケモンの研究や妄想を語る。たまにほかの分野に詳しい人もいる。」場であり、今回のKisiのイベントは「研究者がその知識や思考を応用してポケモンを語る」場だった。ポケモンか、アカデミックな専門性か。どちらに重きを置いているかに違いがあったように思う。研究者の話をポケモンに絡めて聞きたいポケモンライト勢にとっては、Kisiのイベントはとても良かったと思う。だが、もし自分が、今回の発表レベルのブログをアップしたら、ポケモンガチ勢からの玄人質問でめった刺しにされるだろう。そう、前回書いたシザリガー考察記事があまりウケなかったように・・・。ウッ。

あと、リポ学の丁寧さを体感した点がある。リポ学で発表する場合、本番1週間前にスライドの提出を求められる。それをスタッフがチェックしてから本番を迎える。だから発表者は基本的に本番前にスライドを完成させているし、1週間の猶予でばっちりリハーサルもできる。その点Kisiのイベントはどうかというと、スライドの完成度が低いという点ではもっと改善できそうだと思う。

そしてリポ学参加者が集まって和気藹々と話ができたこと、その感動も大きな発見だった。たしかにオンラインは距離を超えて気軽にたくさんの人とつながれる。関東でも関西でも九州でも何の問題もない。顔も見えないからプライバシーもバッチリだ。ただ、オフラインの方がいい感じの「ゆるさ」がある。YouTubeのコメント欄にコメントしたり、リポ学/リポラジで話す時って、テキトーなことを言っちゃうと永遠に残ってしまうわけよ。でもオフラインだったら、結構テキトーなこと言ってもいいじゃん。どうせ残らないし。ゆる~く独り言みたいなこと言えたり、茶々を入れたりするのはオフラインじゃないとできないと思う。運営さん、どうでしょう、ここはひとつ、オフラインでリモートポケモン学会をやるというのは。新宿にいい会場があるみたいなんで。

ついでにいうと、プロジェクターでスライドを投影する場所がホワイトボードになっているので、アドリブで絵や矢印を書き込んだりできるのもGOOD。まぁパワーポイントでもやろうと思えばできるけどね。

どちらにも長所があって、それぞれの面白さがある。そこに気づけたのは、リポ学とKisiの両方に参加したからであり、2つのイベントを準備してくださっている皆様のおかげである。ポケモン考察勢のはしくれとして、このような機会が増えてくれることを、ポケモンを通してポケモンと世界の魅力を知る人が増えてくれることを、心より望む。

ポケモンはただのゲームか?ただのフィクションか?いや、ポケモンを考察することで、私たちが生きるこの世界をより深く知り、もっと楽しめる。

たかが虚構?いや、虚構世界の中にも人知れぬ魅力がいっぱい潜んでいるし、なんなら、現実世界の魅力だって、明るく照らし出してくれるじゃないか。

それまで知りえなかった話が、ポケモンの話だからという理由で、知るきっかけができ、すんなりと頭に入っていく。それがポケモン×学問の大きな意義だと、いちリポ学学会員は思うのであった。

 

そんな、学問とポケモンが交錯する面白い発表も聞けちゃうイベント、リモートポケモン学会が、次回ついに第10回を迎えます!第10回は2024年2月24日(土)、25日(日)で開催!誰でも無料でYouTube配信を見られるよ!みんな、絶対見てね!

シザリガー は 初手 りゅうまい や!?ポケモン×中国語×生物学【比較ポケモン生物学-5】

こんにちは。ポケモンを生物と比較して研究していることを最近すっかり忘れていた二枚貝ホタテです。

比較ポケモン生物学、第5弾のテーマはヘイガニシザリガー

 

まずは、この文を読んでほしい。

龍の要素がほとんど無いにも関わらず、りゅうのまいをなぜか覚える(タマゴわざ、わざレコードで習得可能)。

これは2023年11月現在、ポケモンwikiのシザリガーのページに掲載されている備考である。はたして、シザリガーにはドラゴン要素がないのだろうか?

 

実は、同じページにヒントがある。

ポケモンwikiでは各言語でのポケモン名が(全言語ではないが)記載されている。

シザリガーの中国語はこう書かれている。

中国語(普通話・台湾国語) 铁螯龙虾

うーん、日本で使っている字とちょっとちがうけど、1文字目は鉄だな。さすがにわかる。

2文字目、、、これはハサミのことらしい。特にカニ類のハサミをさす。

3文字目、犬みたいな字だが、ぜひこの字をコピペして別ウィンドウで検索してほしい。文字化けして見えてなかったらすみません。

 

 

検索していただけただろうか。

そう、シザリガーの中国語名の3文字目 ”龙” は「竜」の異字なのだ。

ちなみに4文字目の虾はエビのことみたいだ。

ようするに、シザリガーの中国語名には竜が入っているってわけ。

 

ところで、台湾では日本で使われている漢字の旧字体に近い字(繫体字)が使われているのをご存じだろうか。中国本土では簡単な字(簡体字)に省略されていて、日本で使っている漢字と違うのでわかりにくい。だからポケモンって中国語だとどんな漢字かなぁと思っても、簡体字ではぱっと見て字の意味が分からない。が、台湾のポケモンずかんサイト、そう、寶可夢圖鑑であれば、日本人にも比較的分かりやすい形で中国語名を調べられる。早速ヘイガニシザリガーの名前を調べてみよう!

ヘイガニ→龍蝦小兵

シザリガー→鐵螯龍蝦

シザリガーの1文字目、鐡とは鉄のことだ。

余談だが、繁体字だとルナトーンが月石、ソルロックが太陽岩だ。テキトーか。

コンパンにいたっては毛球だぞ。もっと真剣に名前つけろ。

 

まぁ、それはさておき、ヘイガニシザリガーが竜と関係あるって話に戻る。

ヘイガニシザリガーも名前に龍蝦が入っているわけだが、中国語で龍蝦がなんなのか気になる。

ウィキペディア、もとい維基百科(ウィキペディアの中国語版)で龍蝦と検索すると、そこに現れたのは・・・

zh.wikipedia.org

 

・・・イセエビだ。

ザリガニでも、ロブスターでもなくイセエビ?あとで詳しく話すが、イセエビはエビと言っても大きなハサミを持たない。一方ヘイガニシザリガーには大きなハサミがある。

よし、ならばシザリガーの後ろ3文字、螯龍蝦で検索してみよう。何かわかるかもしれない。早速維基百科で検索だ!

zh.wikipedia.org

カタカタカタカタカタカタッ、タンッ!ビンゴだ。(映画に出てくるハッカー風)

どうやら、シザリガーの後半3文字、螯龍蝦はロブスターを意味するようだ。

ちなみに美洲螯龍蝦の美洲とは、北米・中米・南米をまとめた地域のことだ。維基百科によると。

ロブスターは見た目もザリガニに似ているし、日本でもウミザリガニと呼ぶし、実際ザリガニに近い仲間だ。ついでにザリガニの中国語名も調べよう。ザリガニは蝲蛄、または螯蝦だ。おぅ、龍なくなっとるやないかい。

ここまでのデータをまとめよう。

ヘイガニは中国語(繁体字)で龍蝦小兵

シザリガーは中国語(繁体字)で鐵螯龍蝦

・龍蝦とはイセエビのこと

・螯龍蝦とはロブスターのこと

・螯蝦とはザリガニのこと

 

このデータを使って、ヘイガニシザリガーについて考察していこう。

まず、ヘイガニシザリガーの日本語名が気になる。

ヘイガニは・・・これなんだろうな?一応名前が似た生物で、ヘイケガニがいる。エビではなく、海にすむカニの1種で、怒った人の顔みたいな背中が特徴だ。壇ノ浦の戦いで源氏に敗れ、海に沈んだ平家の怨念がこもっているともいわれてる。決してケガニに対しHey!と呼びかけているわけではない。

そういえば、2月にしものせき水族館海響館に行ったとき、しれっと展示していたな。壇ノ浦も近いし。

海響館のヘイケガニ ハサミがギザギザで好き

ただ、一つ言えるのは、ヘイガニカニじゃないだろってこと。恐らくモチーフはザリガニ。図鑑説明などから、アメリカザリガニがモチーフだといえる。つまり、ザリガニのガニってことだ。

・・・あれ?ザリガニはカニじゃないのに名前にガニついてね?

ザリの部分は「退る=すさる」、つまり「あとずさり」のずさりの部分が由来ともいわれている。あとずさりするカニでザリガニ。ザリエビじゃねぇのかよ。もしかしたらハサミが大きいからカニ扱いなのかもしれない。うーん、ヘイガニもザリガニも名前の由来が全然ぱっとしない。明ら'かに'したかったな。カニだけに。一方のシザリガーはずいぶん分かりやすい。シザー+ザリガニだ。

ともかく、ヘイガニシザリガーも、日本人にとってなじみ深いザリガニがモチーフのポケモンとみて間違いない。もっとも、日本人にザリガニがなじみ深いのは外来種アメリカザリガニが野生化しているからであり、しかもアメザリは条件付特定外来生物になるくらい自然をぶち壊しているわけだが・・・。

次に、シザリガーの頭を見てほしい。

zukan.pokemon.co.jp

黄色い星みたいなのがある☆

これは恐らく、ロブスターの「スター」のダジャレだ。そう、ヘイガニ系統のモチーフは、ザリガニを基盤としつつ、そこにロブスターの要素が織り込まれているのだ。日本人にとって、特にポケモンのメインターゲットたる日本の子供たちにとって、ロブスターは身近ではない。食用になることもないし、水辺にもいないし、水族館でもほとんど見ることがない。だから、名前なども含め、大本はザリガニのポケモンなのだろう。

一方、中国語ではロブスター要素をより前面に押し出した名前になっている。そして、その名前には「竜」の文字が入る。だから、りゅうのまいを習得するのだろう。

しかし子供たちになじみ深いザリガニをポケモンにするというのは十分理解できるけど、そこにわざわざロブスターのフレーバーを混ぜ込むとは。もしかしたら、ポケモンの製作陣、なかでも影響力のある人物の中にロブスター好きがいるのかもしれないな・・・

 

 

では、ここからは生物学の話に進む。カニ・イセエビ・ザリガニ・ロブスターとはどんな存在なのだろうか。

カニやエビ、ダンゴムシやミジンコは節足動物甲殻類というグループに入る。そのなかでもカニ・エビ・ヤドカリの仲間は十脚目という仲間。十脚目をさらに2グループに分けよう。

実は、ここで人間の感覚とはズレた分類が生じる。

十脚目の2つのグループ、1つめは母親が卵を抱かずにそのままばらまくタイプ。もう片方は卵をおなかで守り、ある程度成長させるタイプ。前者にはクルマエビサクラエビなどが入る。で、後者にはイセエビ・ザリガニ・テナガエビカニ・ヤドカリなんかが入る。そう、同じエビといっても、クルマエビテナガエビは全然違う仲間で、むしろテナガエビカニの方が近い親戚といえるのだ。

ちなみに前者は根鰓亜目、後者は抱卵亜目という。

 

では、卵を抱くグループ、抱卵亜目を見ていこう。さらに細かく〇〇下目というグループに分かれる。ここでようやくカニの仲間(短尾下目、通称カニ下目)とヤドカリの仲間(異尾下目、通称ヤドカリ下目)がエビから分かれる。じゃあエビはエビ下目?というとそうではない。コエビ下目、イセエビ下目、ザリガニ下目などに分かれる。ようはエビたちがいくつかの下目に分かれて、その一つがカニ、別の一個がヤドカリ、みたいな分類なのだ。

さて、先ほどザリガニとロブスター(ウミザリガニ)は近い仲間と紹介した。実はザリガニとロブスターは同じザリガニ下目に属しているのだ。だから見た目も近いし、実際に近い親戚ってわけ。逆にイセエビはそれとは別にイセエビ下目が用意されているように、そんなに近い仲間ってわけじゃない。だって、よくみたら全然似てないもん。

イセエビは大きなハサミを持っていない。じゃあハサミがないかというとそうでもなく、メスの脚の一番後ろがハサミになっている。このハサミを使い、お腹で抱いている卵を世話するのだ。なおイセエビ下目はachelataという。「ハサミがない」という意味。

先ほどイセエビは中国語で竜蝦と書く、と書いた。で、日本でもたまに竜蝦と書いてイセエビを意味することがある。そして、日本には「青竜蝦」という難読漢字もある。一体何なんだ!?

 

青竜蝦はシャコと読む。実はシャコ、他にも蝦蛄と書くことがあるし、英語でもMantis shrimp (カマキリ エビ)というわけだがシャコは十脚目に入っていないのだ。口脚目という仲間。つまりエビじゃない、というか、カニとかヤドカリの方がよっぽどエビに近い親戚ってこと。あ、でもアナジャコっていう名前の甲殻類もいて、こいつは十脚目アナジャコ下目なんだよね・・・

それにしても、中国語でイセエビ→竜蝦、ロブスター→螯竜蝦と書いたが、実は英語でイセエビをspiny lobsterという。どうやら、ロブスターとイセエビに共通する名称が使われているようだ。つまりイセエビとロブスターは分類やハサミの有無に問わず、同じくくりとみられているみたい。ここから推測されることは、大きくてゴツゴツしたエビ的な生物という位置づけで、同じ単語が使われているのだろう。一方、日本近海にはイセエビこそ生息しているが、ロブスターが生息していない。だからロブスターは英語そのままでロブスター、またはオマールエビ、ないしウミザリガニという名称で呼ばれているんだと思う。これがイセエビとロブスターが混同しない理由なのかな。

世界各国の言語でのポケモンと生物の名前を比べると、生物と人類の歴史の深みが垣間見えて面白いなぁ。

 

最後に、ロブスターにまつわるポケモンといえば、もう一種いる。ブロスターだ。こちらはブロスターというポケモン自体にロブスター要素が含まれてるとはあんまり思わない。図鑑説明に書いてある、大きいハサミがおいしいというくらい。むしろこのポケモンの最大のモチーフはテッポウエビだ。テッポウエビは片方のハサミが肥大化し、高速で閉じることで衝撃波を発生させ攻撃する。抱卵亜目コエビ下目の立派なエビ類だが、やってることはほぼポケモンみたいな生命体だ。ウデッポウブロスターはまさにテッポウエビをモチーフとしたポケモンで、そこに爆発のblastとロブスターからとった名前をつけたとみるべきだろう。

テッポウエビポケモンに、関係ないはずのロブスターがいきなり登場する。どんだけロブスターをポケモンに出したいんだ?まさか、本当にポケモンの制作陣の中にはロブスター好きがいるというのだろうか・・・

 

 

リモポケ学会エクスカーション 群馬県立自然史博物館私的解説2

やっポニーおー

 

前回のあらすじ

群馬県立自然史博物館の解説記事を書きかけで途中でアップした二枚貝ホタテ。

群馬県立自然史博物館の展示の順路は

宇宙→化石→現代の自然→生物の進化→人間→企画展会場

という流れだが、まだ常設展の半分、古生物のゾーンしか紹介してないのに記事が1本できてしまった。はたして、巡回展『ポケモン化石博物館』の解説まで行けるのか?

 

守れ!小さな宝物

まずは現代を生きる生物のコーナーより、素晴らしい巻貝の紹介です。

希少種 カワネジガイ

カワネジガイは1cmにも満たないような小さくてか細い巻貝。日本国内の絶滅危惧種をまとめたリスト、環境省レッドリストの中で、一番ヤベェぞっていうランクであるⅠA類(CR)に指定されています。ちなみに2020年公表の最新版環境省レッドリストでは、絶滅した貝類が19種、ⅠA類が39種、その一つがカワネジガイとなっています。

絶滅危惧種という意味でも超激レア貝類なわけですが、カワネジガイはその生態もオンリーワン。まず、巻貝の殻の巻き方は8~9割が正旋の右巻きです。つまり上から見たときに時計回り、ひらがなの「の」の字の巻き方で、上から下に巻いていきます。逆の左巻きの巻貝は少数派。カワネジガイはその少数派なのです。しかも、カワネジガイの殻は巻きがユルい!これも巻貝の殻としては少数派です。

カワネジガイの面白い生態は他にも。岡山大学の福田先生が中の人を務めるアカウント、軟体動物多様性学会【公式】では、カワネジガイを「日本の淡水貝の七大珍種に含める」といっています。その連ツイの中で、こんな話が紹介されています。

 

なんと、水中だけで生活するのではなく、季節によっては陸に移動するのでは?というのです。水陸両用!?

まぁ、真面目な話をすると、貝、虫、草などなど、世の中には地味で知名度も低い人気のない絶滅危惧種がたくさんいます。そうした絶滅危惧種を全て把握することはできないでしょう。ただ、日の目を見ない絶滅危惧種がいることだけでも理解していただけると幸いです。

 

あっ、これもリポ学でやったところだ!

リモートポケモン学会的に外せないのがこちら。

こ、この鳥は!

そう、シジュウカラ(雌)・・・ではありません。カッコウの仲間、ジュウイチです。増田ジュウイチではない。ジュウイチはカッコウホトトギス同様、他の鳥の巣に卵を産んで他人に育てさせる生態、托卵を行います。ヒナは翼にある口のような模様を親に見せます。1羽しかいないのにあたかも3羽いるかのように騙すことで、育ての親にたくさん餌を運ばせるのです。

リモポケ学会の皆さん. もし「フーディン」のような記憶力をお持ちなら、以前リモポケ学会にジュウイチが登場したことを覚えているかもしれません。そう、ビャクダンさんの発表

ラスタルポケモンの脳 〜医学的検査にむけての考察〜

ジヘッドの体の構造についての考察で登場します。

なかなか野外で見ることも難しく、動物園でも飼育されているのを少なくとも自分は見たことがありません。ぜひ標本を見てください。

 

ウマのたかさについて

続いては、ご存じウマ。

ウマの骨格標本 周りにも骨格標本があるようだが・・・?

アバクロマスダではない。

リポ学的には、やはりポニーについて知っておきたいところ。実はポニーは、チワワやホルスタインコシヒカリといった品種の名前ではありません。「肩までの高さが147cm以下のウマの総称」つまり品種も血統も関係ないんです。

注目したいのは、肩の高さが基準になっているということ。人の身長は頭のてっぺんまでの高さですよね。肩までの高さで身長を測ることはまずないですね。一方、ウマの頭のてっぺんまでの高さを測るのは大変です。ていうかどんなポーズの時の身長を測ればいいんだよって話。そこで肩ですよ。頭と違って肩は動かないし。しかもおあつらえ向きに、肩には硬い骨があるのです。そう、頭を支えるための筋肉がつく場所、棘突起

動物の体の大きさを測る場所は、その動物の体の形、そしてどこだったら測りやすいかによって変わるのです。

 

気をつけろ!下にもあるぞ

続いてはダーウィンの部屋。

オレは・・・恋する男、その名もチャールズ。惚れた女の気をひきたくて、新しい学説を唱えたのさ。その名も自然淘汰

ということで、チャールズ・ダーウィンさんに絡めた展示室です。ダーウィンさんもいいんですけど、この部屋、たくさんの標本が雑多にごちゃっと置かれています。まさに博物館の原型、ヴンダーカンマー(驚異の部屋)ですね。この部屋の展示は、下にも注目。引き出しがあって、それを開けるとまた標本がこんにちはするのです。

こんにちは

時間があったら、引き出しの中も見てください。

 

棘突起

はい棘突起

キリンの骨格。どこを見ますか?そう、棘突起ですね。キリンの首は長さ2m、重さ150kgもあり、もはや白鳳みたいなもん。そんなクソデカオブジェクトを自在に動かすっていうのはね、白鳳の足首をつかんでブンブン振り回すようなもんですよ。それを可能にするのが、首の付け根に着いた筋肉と、その筋肉がつく棘突起です。

 

集結!3大陸のハイギョたち

さぁ、ポケモン化石博物館の会場は目の前!というところでもう一つ、マニアックだけど素晴らしい展示があります。ハイギョです。

アフリカハイギョ

ミナミアメリカハイギョ

オーストラリアハイギョ

ハイギョは肺を持つ魚。そして、他の魚より人類に近い親戚でもあります。いやいや、魚じゃんと思うかもしれませんが、他の魚とは全く違う特徴があるのです。ヒレにご注目。普通の魚は胴体から直接ヒラヒラした薄いやつが生えていますね。しかしハイギョとシーラカンスは違います。彼らのひれはもはや足のようになっており、これが四本の足で大地を踏みしめる動物の原型になったのです。ちなみにシーラカンスよりもハイギョの方がより哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類に近い仲間ですよ。
では簡単に3種のハイギョをご紹介。まずはアフリカハイギョ。現地の人々は、スコップを持ってこの魚を捕まえます。乾季になると繭を作って地中に入り、冬眠ならぬ乾眠をするので、現地の人は土を掘ってハイギョを捕まえるんだとか。もちろん、水が無くても肺があるので呼吸可能。また、水中にいても定期的に空気を吸いに浮上します。これを活用するのが巨大な水鳥ハシビロコウ。じっと動かず、呼吸のために浮上したハイギョを待ち伏せする習性があります。高知県のいち動物公園では、これを再現するかのように、ハイギョの水槽の背景にハシビロコウの写真が貼ってあります。ハイギョの気持ち考えろ。

ミナミアメリカハイギョは学名Lepidosiren paradoxaといいます。ん?sirenって言った?

そう、人魚セイレーンです。おそらくですが、これは両生類のサイレンのことだと思います。イモリやサンショウウオの仲間で、前足は生えているけど後ろ足がないやつがいます。人魚みたいですよね。だからサイレン。で、そのサイレンに似ているから、鱗のあるサイレン、という意味でレピドシレンと名付けられたんじゃないかな。

最後にオーストラリアハイギョ。じつは私二枚貝ホタテがポケモン週末レポート第1回で取り上げた生物です。

とんでもなく大きな遺伝情報の量を誇るハイギョ。ぜひミュウに思いをはせてください。

 

さぁ、いよいよポケモン化石博物館の世界へ・・・

レッツゴー!

 

頭が固い?いや、堅いんだ!

 

 

 

 

「分厚い頭のトカゲ」を意味するパキケファロサウルス

ポケモン化石博物館は「メタ」なネタはありません。つまり、「このポケモンはこの恐竜がモチーフだ」みたいな話は一切なく、ポケモンも一つの生物のように扱われているのです。子供たちも来ますからね。夢は壊せない。でも、我々はいい大人なのでメタな話をしますよ。

ダイヤモンド・パールで登場した化石ポケモンズガイドスラムパルドタテトプストリデプス。実はこのポケモンにはある共通点があるのです。

ズガイドスラムパルドパキケファロサウルスなどの”堅頭竜類”がモチーフです。一方タテトプストリデプストリケラトプスら”角竜類”がモチーフ。かたや二足歩行、かたや四足歩行ですが・・・

 

恐竜の一般的な分類は以下の通りです。

恐竜は大きく分けると2つのグループから構成されます。

Ⅰ.竜盤類 

Ⅱ.鳥盤類

で、竜盤類はこんな感じに分かれます。

Ⅰ-1.獣脚類 ティラノサウルスなど二足歩行で肉食の恐竜

Ⅰ-2.竜脚類 アマルガサウルスなど首と尾が長い植物食恐竜

ポケモンでいうと、チゴラスアマルスなわけですね。

で、鳥盤類はこんな感じ。

Ⅱ-1.鳥脚類

Ⅱ-2.装盾類

Ⅱ-3.周飾頭類

鳥脚類にはイグアノドン、マイアサウラ、パラサウロロフスなんかが入ります。ぶっちゃけ地味であんまり特徴がない仲間ですが、実は恐竜の中でも特に繁栄したグループだったりします。奇をてらうより、シンプルが一番なのかも。

装盾類はさらに

Ⅱ-2-①.鎧竜類 アンキロサウルスなど細かい骨が鎧のように体を覆う植物食恐竜

Ⅱ-2-②.剣竜類 ステゴサウルスなど尾のトゲと背中の突起が特徴の植物食恐竜

に分かれます。

そして最後に周飾頭類。ここに入るのが、パキケファロサウルスら堅頭竜類と、トリケラトプスや角竜類です。そう、この2グループは近い種類ってわけ。

体形は全然違う両者ですが、頭の周りにトゲを発達させていることが共通点です。あと、角竜の原始的な種類は半二足歩行というか、微妙に立ってるんですよね。角竜立つな。

 

古代昆虫の大きさに驚愕せよ

メガネウラとムカシアミバネムシの模型

インターネットでなんでも情報が手に入る時代。それでも博物館に行く価値があるとすれば、その一つは大きさを実感、体感できるということです。せっかく博物館で実物標本や実物大模型を見るんだったら、その大きさを体感しようではありませんか!

メガネウラとムカシアミバネムシは石炭紀という時代に大型化を果たした昆虫です。恐竜誕生の三畳紀の1つ前である、ディメトロドンがいたペルム紀の、さらに1つ前が石炭紀ですね。昆虫は呼吸の効率が悪く、小さいうちはいいけど、大きくなると酸素の供給が難しくなるんです。石炭紀という時代は巨大なシダ植物が繁栄し、酸素濃度が高かったとされる時代。昆虫も酸素が十分にあったことから、一部が巨大化したのです。

現代の酸素濃度では絶対にありえない巨大昆虫。そのサイズ感を楽しみましょう。

 

同じ?違う?ポケモンと古生物

最後に、ポケモン化石博物館を通して、自分が大事だなと思ったことを紹介。

アーケンの骨格再現模型を見たとき、こう思ったんですよ。

 

あたまでっか!

いや、頭デカすぎんだろ、と。アーケンの隣には始祖鳥がいるわけで、始祖鳥は頭が小さい。頭が小さくないと飛べないし。そう、ポケモン、特に進化前のポケモンは体に対して頭が大きすぎるのです。

つまり、「ポケモンと生物の違い」これこそポケモン化石博物館で観察するべきものだと思います。もちろんどこが共通しているか、何がポケモンのモチーフになっているのか、というのも非常に面白い。生物についてそこまで詳しくない人なら「こんな生物がいたんだ」「これがモチーフなんだ」「モチーフになった生物がいたんだ」という感想を抱くのも大事でしょう。でも、本当にポケモンの本質、そして生物の本質をあぶりだすのは相違点なんじゃないかと思います。

以上、ポケモンと生物の比較を愛する者からのメッセージでした。

 

リモートポケモン学会エクスカーション? 群馬県立自然史博物館私的解説

やっポニおー!

リモートポケモン学会自然科学支部生物班(そんなものはない)二枚貝ホタテです。

 

先日、リモートポケモン学会言語支部フランス語班(そんなものもない)のカルフールさんが、巡回展『ポケモン化石博物館』を開催中の群馬県立自然史博物館に一緒に行く方を募集していました。いいなぁ。自分も8月に1人で行ったんですが、何人かで意見を交換しながら見るのは楽しいですからね~。1人で自由に鑑賞するのもそれはそれでいいんですけど。あいにく自分はその日に用事があるので現地に行くのは難しい。しかし、群馬県立自然史博物館の話もしたい・・・そうだ!ブログで紹介しよう!

リアルな学会では「エクスカーション」といって、学会のために集まった研究者たちが会場近くの観光をしたりします。ということで、リモートポケモン学会リモートエクスカーションを始めましょう!

以下、8月2日に自分が行ったときの体験、感想、オススメ観察ポイントです。3か月半経って変わったことがあるかもしれませんのでご承知ください。

 

覚悟の準備をしておいてください!

群馬県立自然史博物館に行く前に覚悟をしておくべきことをまとめますね。

群馬県立自然史博物館にはレストランもなければカフェもありません!マジかよー。クッソ山奥なので。一応自分が行ったときはキッチンカーが出てたのと、前にソフトクリームのお店があったくらい。

また、山奥なのでスマホはネットにつながりませんでした。(スマホのキャリアはauです)。館内にはフリーWi-Fiがあるので、ネットを使うならWi-Fiを使った方がいいかもしれません。

 

さて、では本題。群馬県立自然史博物館に来たら、早速ポケモン化石博物館を見に行こう・・・と思いきや、先に常設展を見てからポケモン化石博物館に行け、というルートの模様。ということで常設展の解説をしていきます。

群馬県立自然史博物館の常設展は、地球が生まれ、生物が進化してきた歴史を追い、そして現代の自然を見て、最後に人間も生物の一つであること、自然の一部であることを学ぶというストーリーです。いいですねぇ、ストーリーのある展示は。

なんか言いたくなる宇宙のキセキ

ウィドマンシュテッテン構造の展示

最初に紹介するのは、隕石。一部の隕石の、その断面を酸で処理する時にのみ現れるという美しい構造、それがウィドマンシュテッテン構造です。美しさもさることながら、この言葉、いいですよね。ウィドマンシュテッテン構造。言いたくなること間違いなしなので、ぜひ見てください。ちなみにウィドマンシュテッテン構造がよく見える大きくてきれいな隕石標本が、愛知県ののんほいパーク豊橋市自然史博物館にあります。こちらもいい博物館ですので、機会があったらぜひ行ってみましょう。

 

奇妙なエビの奇妙な顎

続いて古生物のゾーン。注目したいのはアノマロカリスです。

アノマロカリスの模型


奇妙なエビという名を持ち、全身が個性の塊みたいな存在ですがなかでも口が異常。まるでパイナップルを輪切りにしたかのような、およそ顎とは思えない形です。

人間を含む、多くの脊椎動物は上下に開く顎をしています。一方、昆虫やカニなどの節足動物は左右に開く顎です。むしタイプのポケモンも左右に動く顎のものがいて、特にアゴジムシ系統が分かりやすいですね。彼らは電気を操る種族だけあって、口を開けると隙間が稲妻のマークみたいになります。アノマロカリスは上下でも左右でも、どちらでもない口を持ちます。歯がドーナツ型に並び、それぞれが動くというわけ。この特徴からアノマロカリスの仲間は、ラディオドンタ類、日本語では放射歯類と呼ばれています。さて、博物館にはアノマロカリスの模型があります。背中側しか見えず、おなか側はとっても見づらいんですが、がんばってみると・・・

口までしっかり再現!

すごい再現度!ほとんど誰も見ないであろうおなか側の口まで精緻に作られています。お見事。さて、アノマロカリスと似ているポケモンアノプスはどうなのでしょうか!?実はポケモン化石博物館にアノプスの模型があります。はたしてアノプスの口はどうなっているのか?そしてアノプスの模型はどこまで再現して???ま、裏側が見えるかは別問題ですが・・・

アノプスの模型

あ!進研ゼm・・・リモポケ学会でやったところだ!

古生物ゾーンには、こんな面白いものもあります。

腕足動物ミドリシャミセンガイの巨大模型

めっちゃでかいシャミセンガイの模型です。本物の殻は数センチしかないんですけど。二枚の殻があるから二枚貝か?いえ、これは腕足動物の仲間。腕足動物といえば、そう、『リモート’2まいがいポケモン’学会』ですね。えどです氏のパートで登場した、背と腹に殻を持つ生物です。腕足動物は、今でこそ種数も少なく、地味な生物。しかし古生代、恐竜が生まれるより前の大昔の海にはたくさんの腕足動物がいたのです。かつて栄華を極め、衰退した今も生き残る腕足動物に思いをはせてみましょう。

 

お前は恐竜じゃねぇ!

単弓類 ディメトロドン

あっ!恐竜だ!いや、恐竜ではなく、ディメトロドンです。恐竜が生まれたのが三畳紀という時代。そこからジュラ紀白亜紀と繁栄し、白亜紀末に落下した隕石によって(鳥以外)絶滅しました。で、ディメトロドンはその三畳紀の1つ前、ペルム紀という時代の生物です。恐竜は足が下に向かってまっすぐ伸びる「下方型」なのに対し、ディメトロドンは足が横に伸びる「側方型」です。

ディメトロドンは単弓類といって、恐竜より哺乳類に近いことが分かっています。哺乳類のご先祖に近い親戚というわけ。

さて、東京ディズニーランドの「ウエスタンリバー鉄道」では、トンネルに入ると恐竜が出てきます。アナウンスでも「恐竜の世界へ行こう」的な感じのナレーションです。しかし最初に出てくる”恐竜”は、ティラノサウルスでもトリケラトプスでもなく、エダフォサウルスと思しき存在。ディメトロドンより頭が小さい単弓類です。そう、恐竜といいつつ恐竜と時代も分類も違う生物が出てくるのです!例えるなら、「徳川将軍を紹介するよ。まずは織田信長!」と言っているようなものです。

 

流行りの?セイレーン

海牛 ミオシーレン

Twitterではセイレーンが人気みたいっすね。ということで、セイレーンに関する、というかセイレーンの名を冠する古生物を。人魚のモデルと言われるジュゴンマナティーの仲間、ミオシーレンです。ミオはこの動物が生きた時代、中新世(Miocene)を、シーレンは人魚セイレーンを意味します。そういえば、ポケモンにも人魚っぽいポケモンがいた気がします。いや、あしかポケモンジュゴンじゃなくて、いやまぁアシカっぽいポケモンではあるんですけどね?

ジュゴンマナティーは海の中で植物を食べているので、海の牛、カイギュウと呼ばれています。ウミウシじゃないよ。そんなカイギュウの面白観察ポイントはずばり肋骨!すげぇ太い。これはおそらく浮力を調整するためでしょう。骨は普通水に沈みます。重たい骨が錘となって、海底に沈みやすいのでしょう。

 

ちなみに、ミオシーレンのあたりで道が3方向に分かれています。右の道に行くと恐竜時代の生き物がもっとたくさん見られるんですが、ここで左かまっすぐに進んでしまうと見逃がしちゃうのでお気を付けくださいませ。

 

巨大!メガプテラ

メガプテラを探せ!

↑の画像に「メガプテラ」がいるの、分かりますか?プテラメガシンカした姿ではなく、メガプテラという名前の生物がいるのです。

 

正体は、ザトウクジラ。画像右の、黒い長いやつがザトウクジラのヒレの模型です。ザトウクジラは他のクジラよりも圧倒的に胸ビレが長いため、これを翼に例え、大きな翼という意味で「Megaptera novaeangliae」という学名が付けられました。ザトウクジラの胸ビレはゴツゴツしていて、このゴツゴツが流体力学的にイイ感じになって、泳ぐ高率が上がるとされています。このヒレの構造を風力発電の風車に応用する研究もあるんだとか。

www.t-and-t.co.jp

バッフロンはバッイソン?

バイソン。

バイソンです。かっこいいですね~。特にかっこいいのが、背骨の前の方、上に伸びた「棘突起」という突起です。角が生えているなど、頭の重たい哺乳類ではこの突起が発達し、頭をひっぱったり支えたりするのに使う筋肉がつくわけです。

 

さて、バイソンと呼ばれる動物なんですが、実はアメリカではこの動物をバイソンと呼ぶこともあれば、バッファローと呼ぶこともあります。ややこしいですが、日本では水牛のことをバッファローと呼びます。水牛の方のバッファローは水に入るので、あんまり長い毛が生えていません。一方バイソン(バッファローともいう)は頭から肩にかけてもこもこ、というかボフボフの毛が生えています。まるでアフロですね。

ところで、ポケモンバッフロンはバイソンなのでしょうか?バッファローなのでしょうか?見た目はバイソンにそっくりですが名前はバッファローっぽい。ただしバイソンはバッファローと呼ばれることもある。日本人からすると違和感があるんですけど、バッフロンバッファローポケモンと言っても一応間違いではないということです。

 

もっと頭のデカい動物

さっきの写真、バイソンの奥、何かいますね。そう、バイソンより巨大な動物、ゾウです。ゾウはキバ、鼻、そして耳と、ただでさえデカい頭に、さらに重たいものをくっつけたスタイル。さぞかし棘突起も大きい・・・かと思いきや、バイソンと比べると、そこまで長くありません。それもそのはず、ゾウは首が短い、いわば胴体に頭を直接ガッチャンコしたような体形なのです。それなりに首があって頭を柔軟に動かすバイソンと異なり、あんまり頭を動かさないゾウは棘突起が小さめでもいいと。その代わり、鼻を自由自在に動かすことで、餌をとったり水を飲んだり、周りの状況を感知するのです。

ゾウとバイソン

さぁ、次からはいよいよ現代の自然を見ていきます。が、今回はここまで。次は現代の生物と、生物学の巨人ダーウィン、そして人間を見ていきます。

 

おまけ

最高

これも最高

最高かよ

厚歯二枚貝

二枚貝の展示もたくさんあります。全部良いです。全部見ましょう。

次のチンアナゴは誰だ!?水族館ネクストブレイク生物予想 Part2

水族館のスターになりたい二枚貝ホタテです。

今日、11月11日はチンアナゴの日ですね!

さて、前に水族館のネクストブレイク生物は何か?という記事を書きました。

次のチンアナゴは誰だ!?水族館ネクストブレイク生物予想 Part1 - ふしぎないきものかたるかい

候補として

・エポーレットシャーク

アメフラシ

コウイカ

・ハリセンボン

・ビーバー

を紹介しました。

今回もチンアナゴみたいに人気に火が付きそうな、ネクストブレイク生物候補を挙げてきます!

 

光り輝く「にじいろのさかな」

トップバッターは、ドーキンシア・フィラメントーサ。

インド周辺に生息する、コイ目コイ科の淡水魚です。注目ポイントは、なんといってもきれいな鱗。

光を反射し、様々な色に輝くのです。金魚や錦鯉とも一味違う、泳ぐアートです。

 

カワスイのドーキンシア・フィラメントーサ 繁殖期は赤く染まる

さて、前回は英名エポーレットシャーク、和名マモンツキテンジクザメを紹介しました。かわいいけど、なんせ名前が憶えづらい。

そして今回紹介するのはドーキンシア・フィラメントーサ。軽く前回を超えてきましたね。インドに生息する魚で、日本語の名前なんてありません。ラテン語ギリシャ語に由来する、科学の世界で使われる名前、学名で呼ばれます。

学名と言えば、ティラノサウルス・レックスを筆頭に、古生物は学名で呼ぶことがほとんどで、和名がありません。古生物以外にも、細菌のような微生物、そして、海外の熱帯魚や水草は、学名をそのまま使って呼ばれることが多いです。誰か!誰かいい名前つけて!

うーん・・・鱗が虹色だから、レインボーフィッシュは?と言いたいところですが、すでにレインボーフィッシュという魚は別にいるんですよね。水族館ではネオンドワーフレインボーやハーフオレンジレインボー、ポポンデッタ・フルカタなんかをたまに見ます。

すみだ水族館のハーフオレンジレインボー

おぉ、カワスイよ。どうかこの魚にイイ感じの和名を付けてみないかい?ちゃんとした淡水魚研究者と相談してさ。かわいくて、インスタ受けしそうな名前を頼む。

 

しましまナマズ

続いてはTwitterでいただいた意見より、ゴンズイです。

しながわ水族館ゴンズイ

ゴンズイは海にすむナマズの仲間。日本近海でよくみられる普通種で、釣りでもよく釣られる魚です。毒のトゲを持ち、刺さると激痛が走ることから嫌われています。しかし大きい頭に丸い目がかわいい。トラを90度回転させたような縞模様もおしゃれ。

マリンワールド海の中道 ゴンズイ こっち見んな

ニフレル ゴンズイの子供たち

そんなゴンズイ、なんと、水槽に人が手を突っ込むと、はむはむしてくるんだって。かわいいね。・・・いや毒の魚の水槽に入れたら、そいつが近づいてくるとか怖くね!?

marineworld.hiyoriyama.co.jp

 

貝粉砕!怪力まんじゅう

続いてもTwitterにていただいたご意見。カニの仲間、カラッパ科です。

 

マルソデカラッパ? スマートアクアリウム静岡

かわいい・・・というか、ひょうきんなカニです。丸っこい体に、大きなはさみ。恥ずかしそうに顔を隠しているようにも見え、英語でshame-faced crabと呼ばれています。インドネシアの言葉で椰子の実をクラパと言うそうで、これがカラッパの由来だとか。

体形も面白いですが、カラッパの特徴はまだあります。

 

巻貝を破砕することに特化したはさみ

カラッパの特徴は、ユーモラスな見た目だけではありません。カラッパは左右のはさみで形が違います。右のはさみは巻貝の殻の口に差し込みやすく、そのまま殻をパリパリと破砕できます。殻を割ったら、今度は左のはさみ。尖ったはさみで肉をつまんで食べるのです。

見た目とギャップのあるマッチョな必殺技。それもカラッパの魅力の一つ。

 

アルティメットしゃくれフィッシュ

最後も、Twitterでいただいた意見。淡水魚、エレファントノーズです。

名前のとおりゾウの鼻のような長いものが顔から出ています。

サンシャイン水族館のエレファントノーズ

ゾウの長い鼻は、鼻と上あごが癒合して長く伸びたものですが、こちらは下あごがのびたもの。まさに究極のしゃくれ。この下あごがセンサーとしても働き、餌を探すわけです。

 

で、正直に言いますけど、このままエレファントノーズが本人の力で人気になれるとは思えないんですよね。なんかしらの起爆剤、てこいれが必要。自分は、キャラクター化がいいと思っています。エレファントノーズのキャラ、サンリオあたりが出してくれないかなぁ。そしたらインパクト大の見た目で一気に火がついて、魚としても大人気になるはず。

というわけで、NEXTチンアナゴ予想の話でした。

最後に、札幌に最近できた水族館、AOAO SAPPOROが、「11月11日はヘコアユの日」を推しています。おそらくは第二のチンアナゴの座を狙っているのでしょう。最近公式Twitterアカウントも動き始め、もっぱらヘコアユの話ばかり。

はたして、ヘコアユは人気生物になれるのか。はたまた、AOAOがスベって終わりなのか。今後の展開に注目です。