リモポケ学会エクスカーション 群馬県立自然史博物館私的解説2

やっポニーおー

 

前回のあらすじ

群馬県立自然史博物館の解説記事を書きかけで途中でアップした二枚貝ホタテ。

群馬県立自然史博物館の展示の順路は

宇宙→化石→現代の自然→生物の進化→人間→企画展会場

という流れだが、まだ常設展の半分、古生物のゾーンしか紹介してないのに記事が1本できてしまった。はたして、巡回展『ポケモン化石博物館』の解説まで行けるのか?

 

守れ!小さな宝物

まずは現代を生きる生物のコーナーより、素晴らしい巻貝の紹介です。

希少種 カワネジガイ

カワネジガイは1cmにも満たないような小さくてか細い巻貝。日本国内の絶滅危惧種をまとめたリスト、環境省レッドリストの中で、一番ヤベェぞっていうランクであるⅠA類(CR)に指定されています。ちなみに2020年公表の最新版環境省レッドリストでは、絶滅した貝類が19種、ⅠA類が39種、その一つがカワネジガイとなっています。

絶滅危惧種という意味でも超激レア貝類なわけですが、カワネジガイはその生態もオンリーワン。まず、巻貝の殻の巻き方は8~9割が正旋の右巻きです。つまり上から見たときに時計回り、ひらがなの「の」の字の巻き方で、上から下に巻いていきます。逆の左巻きの巻貝は少数派。カワネジガイはその少数派なのです。しかも、カワネジガイの殻は巻きがユルい!これも巻貝の殻としては少数派です。

カワネジガイの面白い生態は他にも。岡山大学の福田先生が中の人を務めるアカウント、軟体動物多様性学会【公式】では、カワネジガイを「日本の淡水貝の七大珍種に含める」といっています。その連ツイの中で、こんな話が紹介されています。

 

なんと、水中だけで生活するのではなく、季節によっては陸に移動するのでは?というのです。水陸両用!?

まぁ、真面目な話をすると、貝、虫、草などなど、世の中には地味で知名度も低い人気のない絶滅危惧種がたくさんいます。そうした絶滅危惧種を全て把握することはできないでしょう。ただ、日の目を見ない絶滅危惧種がいることだけでも理解していただけると幸いです。

 

あっ、これもリポ学でやったところだ!

リモートポケモン学会的に外せないのがこちら。

こ、この鳥は!

そう、シジュウカラ(雌)・・・ではありません。カッコウの仲間、ジュウイチです。増田ジュウイチではない。ジュウイチはカッコウホトトギス同様、他の鳥の巣に卵を産んで他人に育てさせる生態、托卵を行います。ヒナは翼にある口のような模様を親に見せます。1羽しかいないのにあたかも3羽いるかのように騙すことで、育ての親にたくさん餌を運ばせるのです。

リモポケ学会の皆さん. もし「フーディン」のような記憶力をお持ちなら、以前リモポケ学会にジュウイチが登場したことを覚えているかもしれません。そう、ビャクダンさんの発表

ラスタルポケモンの脳 〜医学的検査にむけての考察〜

ジヘッドの体の構造についての考察で登場します。

なかなか野外で見ることも難しく、動物園でも飼育されているのを少なくとも自分は見たことがありません。ぜひ標本を見てください。

 

ウマのたかさについて

続いては、ご存じウマ。

ウマの骨格標本 周りにも骨格標本があるようだが・・・?

アバクロマスダではない。

リポ学的には、やはりポニーについて知っておきたいところ。実はポニーは、チワワやホルスタインコシヒカリといった品種の名前ではありません。「肩までの高さが147cm以下のウマの総称」つまり品種も血統も関係ないんです。

注目したいのは、肩の高さが基準になっているということ。人の身長は頭のてっぺんまでの高さですよね。肩までの高さで身長を測ることはまずないですね。一方、ウマの頭のてっぺんまでの高さを測るのは大変です。ていうかどんなポーズの時の身長を測ればいいんだよって話。そこで肩ですよ。頭と違って肩は動かないし。しかもおあつらえ向きに、肩には硬い骨があるのです。そう、頭を支えるための筋肉がつく場所、棘突起

動物の体の大きさを測る場所は、その動物の体の形、そしてどこだったら測りやすいかによって変わるのです。

 

気をつけろ!下にもあるぞ

続いてはダーウィンの部屋。

オレは・・・恋する男、その名もチャールズ。惚れた女の気をひきたくて、新しい学説を唱えたのさ。その名も自然淘汰

ということで、チャールズ・ダーウィンさんに絡めた展示室です。ダーウィンさんもいいんですけど、この部屋、たくさんの標本が雑多にごちゃっと置かれています。まさに博物館の原型、ヴンダーカンマー(驚異の部屋)ですね。この部屋の展示は、下にも注目。引き出しがあって、それを開けるとまた標本がこんにちはするのです。

こんにちは

時間があったら、引き出しの中も見てください。

 

棘突起

はい棘突起

キリンの骨格。どこを見ますか?そう、棘突起ですね。キリンの首は長さ2m、重さ150kgもあり、もはや白鳳みたいなもん。そんなクソデカオブジェクトを自在に動かすっていうのはね、白鳳の足首をつかんでブンブン振り回すようなもんですよ。それを可能にするのが、首の付け根に着いた筋肉と、その筋肉がつく棘突起です。

 

集結!3大陸のハイギョたち

さぁ、ポケモン化石博物館の会場は目の前!というところでもう一つ、マニアックだけど素晴らしい展示があります。ハイギョです。

アフリカハイギョ

ミナミアメリカハイギョ

オーストラリアハイギョ

ハイギョは肺を持つ魚。そして、他の魚より人類に近い親戚でもあります。いやいや、魚じゃんと思うかもしれませんが、他の魚とは全く違う特徴があるのです。ヒレにご注目。普通の魚は胴体から直接ヒラヒラした薄いやつが生えていますね。しかしハイギョとシーラカンスは違います。彼らのひれはもはや足のようになっており、これが四本の足で大地を踏みしめる動物の原型になったのです。ちなみにシーラカンスよりもハイギョの方がより哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類に近い仲間ですよ。
では簡単に3種のハイギョをご紹介。まずはアフリカハイギョ。現地の人々は、スコップを持ってこの魚を捕まえます。乾季になると繭を作って地中に入り、冬眠ならぬ乾眠をするので、現地の人は土を掘ってハイギョを捕まえるんだとか。もちろん、水が無くても肺があるので呼吸可能。また、水中にいても定期的に空気を吸いに浮上します。これを活用するのが巨大な水鳥ハシビロコウ。じっと動かず、呼吸のために浮上したハイギョを待ち伏せする習性があります。高知県のいち動物公園では、これを再現するかのように、ハイギョの水槽の背景にハシビロコウの写真が貼ってあります。ハイギョの気持ち考えろ。

ミナミアメリカハイギョは学名Lepidosiren paradoxaといいます。ん?sirenって言った?

そう、人魚セイレーンです。おそらくですが、これは両生類のサイレンのことだと思います。イモリやサンショウウオの仲間で、前足は生えているけど後ろ足がないやつがいます。人魚みたいですよね。だからサイレン。で、そのサイレンに似ているから、鱗のあるサイレン、という意味でレピドシレンと名付けられたんじゃないかな。

最後にオーストラリアハイギョ。じつは私二枚貝ホタテがポケモン週末レポート第1回で取り上げた生物です。

とんでもなく大きな遺伝情報の量を誇るハイギョ。ぜひミュウに思いをはせてください。

 

さぁ、いよいよポケモン化石博物館の世界へ・・・

レッツゴー!

 

頭が固い?いや、堅いんだ!

 

 

 

 

「分厚い頭のトカゲ」を意味するパキケファロサウルス

ポケモン化石博物館は「メタ」なネタはありません。つまり、「このポケモンはこの恐竜がモチーフだ」みたいな話は一切なく、ポケモンも一つの生物のように扱われているのです。子供たちも来ますからね。夢は壊せない。でも、我々はいい大人なのでメタな話をしますよ。

ダイヤモンド・パールで登場した化石ポケモンズガイドスラムパルドタテトプストリデプス。実はこのポケモンにはある共通点があるのです。

ズガイドスラムパルドパキケファロサウルスなどの”堅頭竜類”がモチーフです。一方タテトプストリデプストリケラトプスら”角竜類”がモチーフ。かたや二足歩行、かたや四足歩行ですが・・・

 

恐竜の一般的な分類は以下の通りです。

恐竜は大きく分けると2つのグループから構成されます。

Ⅰ.竜盤類 

Ⅱ.鳥盤類

で、竜盤類はこんな感じに分かれます。

Ⅰ-1.獣脚類 ティラノサウルスなど二足歩行で肉食の恐竜

Ⅰ-2.竜脚類 アマルガサウルスなど首と尾が長い植物食恐竜

ポケモンでいうと、チゴラスアマルスなわけですね。

で、鳥盤類はこんな感じ。

Ⅱ-1.鳥脚類

Ⅱ-2.装盾類

Ⅱ-3.周飾頭類

鳥脚類にはイグアノドン、マイアサウラ、パラサウロロフスなんかが入ります。ぶっちゃけ地味であんまり特徴がない仲間ですが、実は恐竜の中でも特に繁栄したグループだったりします。奇をてらうより、シンプルが一番なのかも。

装盾類はさらに

Ⅱ-2-①.鎧竜類 アンキロサウルスなど細かい骨が鎧のように体を覆う植物食恐竜

Ⅱ-2-②.剣竜類 ステゴサウルスなど尾のトゲと背中の突起が特徴の植物食恐竜

に分かれます。

そして最後に周飾頭類。ここに入るのが、パキケファロサウルスら堅頭竜類と、トリケラトプスや角竜類です。そう、この2グループは近い種類ってわけ。

体形は全然違う両者ですが、頭の周りにトゲを発達させていることが共通点です。あと、角竜の原始的な種類は半二足歩行というか、微妙に立ってるんですよね。角竜立つな。

 

古代昆虫の大きさに驚愕せよ

メガネウラとムカシアミバネムシの模型

インターネットでなんでも情報が手に入る時代。それでも博物館に行く価値があるとすれば、その一つは大きさを実感、体感できるということです。せっかく博物館で実物標本や実物大模型を見るんだったら、その大きさを体感しようではありませんか!

メガネウラとムカシアミバネムシは石炭紀という時代に大型化を果たした昆虫です。恐竜誕生の三畳紀の1つ前である、ディメトロドンがいたペルム紀の、さらに1つ前が石炭紀ですね。昆虫は呼吸の効率が悪く、小さいうちはいいけど、大きくなると酸素の供給が難しくなるんです。石炭紀という時代は巨大なシダ植物が繁栄し、酸素濃度が高かったとされる時代。昆虫も酸素が十分にあったことから、一部が巨大化したのです。

現代の酸素濃度では絶対にありえない巨大昆虫。そのサイズ感を楽しみましょう。

 

同じ?違う?ポケモンと古生物

最後に、ポケモン化石博物館を通して、自分が大事だなと思ったことを紹介。

アーケンの骨格再現模型を見たとき、こう思ったんですよ。

 

あたまでっか!

いや、頭デカすぎんだろ、と。アーケンの隣には始祖鳥がいるわけで、始祖鳥は頭が小さい。頭が小さくないと飛べないし。そう、ポケモン、特に進化前のポケモンは体に対して頭が大きすぎるのです。

つまり、「ポケモンと生物の違い」これこそポケモン化石博物館で観察するべきものだと思います。もちろんどこが共通しているか、何がポケモンのモチーフになっているのか、というのも非常に面白い。生物についてそこまで詳しくない人なら「こんな生物がいたんだ」「これがモチーフなんだ」「モチーフになった生物がいたんだ」という感想を抱くのも大事でしょう。でも、本当にポケモンの本質、そして生物の本質をあぶりだすのは相違点なんじゃないかと思います。

以上、ポケモンと生物の比較を愛する者からのメッセージでした。