こんにちは。
この度、【比較ポケモン生物学】と題して、ポケモン考察を綴ることにしました。
今回は、比較ポケモン生物学とは何か?
ポケモンと生物を比べて何が分かるのか?
という話。
1.比較ポケモン生物学とは何か
一応、この言葉を作った者として、定義から始めましょう。
「私たちが暮らす世界の生物とポケモン、またはポケモンと別のポケモンの特徴を比較し、共通点・類似点・相違点を分析することで、生物について、ならびにポケモンについて考察する遊び」
ポケモンと生物は同じところもあるし、似ているけどちょっと違うところもあるし、全然違うところもあります。
そこを突き詰めていけば、生物についても理解が深まり、ポケモンについてもよく分かるのではないか?と考えています。
2.比較する意義とは?
ポケモンと生物の比較、の前に、まずは生物と生物の比較について語らせてください。
そもそも生物の研究は、生物同士の比較による分析が基礎となっています。
東洋大学生命科学部生命科学科助教の郡司芽久氏は、著書『キリンのひづめ、ヒトの指ーー比べてわかる生き物の進化』でこのように述べています。
生き物を理解するうえで、比較は非常に重要である。さまざまな動物たちを比較することで、動物同士の「似ている部分」と「違う部分」を明確にすることができるからだ。
(中略)
ひとつの生き物だけを見ていても、その生き物のすべてを理解することはできない。「ヒトとはいったいどんな生き物か?」を理解しようと思ったら、ヒトを調べるだけではなく、ヒト以外の動物をよく知り、比較して、「ヒトだけに見られる特徴なのか」「ヒト以外でも見られる特徴なのか」をひとつずつ整理していく必要がある。そうしてはじめて、ヒトという生き物の全体像がはっきりするのだ。
はぁ、なんて銘文なんでしょうか。
私がノーベル賞の選考委員なら即座に文学賞を授与していたことでしょう。
実は、生物を単体で見てもあまりよくわからないのです。
他の生物と比べることで、その生物だけが持つ固有の特徴とか、その生物の仲間の共通点とかが分かるんです。
また、旭山動物園の元園長として、大ブームの火付け役となった小菅正夫氏は、『<旭山動物園>革命ー夢を実現した復活プロジェクト』でこう述べています。
十八世紀を生きたフランスの博物学者であり啓蒙思想家であったビュフォンは、こんな言葉を遺している。
<人を知らんと欲すれば、まず獣を知れ。もしもこの世に動物がいなければ、私たちは自分を知る手がかりさえつかめなかっただろう>
哺乳類は、一般的に周りの関係性から自分を確立していく。つまり他者がいなければ自分がわからない。同じ種の動物だけで生きていては「自分」というものがわからないのだ。「人間とは何か」に関する答えも、ほかの動物を見て、「ああ、自分は人間なのだ」とわかり、安心する。
いやはや、なんて銘文なんでしょうか。
私がEテレの偉い人だったら、日本語であそぼで野村萬斎氏に朗読させていたことでしょう。
生物と人間を比較することで、人間とはどんな存在なのか、自分とは何かが分かるのです。人間はある意味で特異な生物であり、一方で、しょせんは生物の一種に過ぎないとも言えます。人間の特別な部分も、他の生き物と同じ部分も、やはり比較によって分かるのです。
さて、生物(人間を含む)と生物を比較することが、生物や人間についての理解を深めるカギだと分かってもらえたでしょうか。
最後に紹介するのは、ポケモン化石博物館の図録です。
ポケモン化石博物館は、生物の化石と化石ポケモンを比較するというコンセプトの企画展です。北海道の三笠市立博物館でアンモナイトを研究する傍ら、ポケモンを愛し、ポケモンから大きな影響を受けたという相場大佑氏が発案し、全国の博物館を巡回しています。
その図録のあとがきには、死ぬほどいい言葉が掲載されています。
この展示ではみなさんに、ポケモンの世界のカセキポケモンと私たちの世界の化石、そしてその研究を見比べてもらいました。観察と比較は科学の基礎です。どんなに偉大な発見にも、その根底には必ず丹念な観察と比較があります。この展示を通して、観察と比較の楽しみを感じていただけたらとてもうれしいです。
(中略)
それから、この展示室の外でも、この世界にはポケモンに似た生き物がいるかもしれません。ぜひ、自然を広く眺めて、様々な生き物に注目してみてほしいと思います。「この生き物は、なんだかポケモンに似てるな」と考えながら眺めてみると、今まで気が付かなかったことを発見できるかもしれません。それから、この世界の生き物のことをいろいろ知ると、ポケモンの世界もより楽しめるかもしれません。
良すぎる。
もし私がハッサクさんだったら感動のあまりドラゴーン!!と叫んでアオキさんの鼓膜をブチ破っていたところでした。
ポケモンと生物を比較すれば、ポケモンの世界も面白くなる。そして私たちが生きているこの世界のことも、より一層楽しめる。
だからやめられないんだ。最高なんだ。
ポケモンの生態は謎に包まれています。常に画面の向こう側にいる、手の届かない存在です。ある意味では、化石でしか調べられない古生物と通ずるところがあります。
ポケモンについてもっと知りたい!ポケモン好きなら、そう思うのは当然です。
そこで、生物と比べてみるのです。
たとえば、ポケモンAと生物Bの身体的特徴に共通点や類似点が見つかったとします。
生物Bの身体的特徴は、○○という生態に関係する、としたら?
ポケモンAについて、「生物Bと似ているということは、ポケモンAは生物Bと同じ〇〇という生態を持っている可能性が高い!」と推測できます。
また、ポケモンには当然「ポケモンらしさ」があります。ポケモンの特異性と言ってもいいでしょう。ポケモンらしさを知るためには、ポケモンではない何かと比べるしかありません。そこで役に立つのが生物です。
「ポケモンたちにはCという特徴があり、一方で生物にはDという特徴がある。つまりCはポケモンらしさといえるだろう。ポケモンには、わざを繰り出し戦うという生態があるため、Cがポケモンの特徴になっているのではないか?逆に、生物にはDという特性があるともいえるだろう。」
みたいな。
もちろん、ポケモン同士の比較も意義深いでしょう。ポケモン同士の共通点や法則性、逆にポケモン同士で違うところが見つかるかもしれません。
比較ポケモン生物学の目的は、何もポケモンの考察だけではありません。
ポケモンと比べれば、生物の特徴が分かるんです。ひいては、人間とは何か、自分とはどんな存在か、この世界はどんな理によって成り立っているのかが見えてくるはず。
さて、概論はここまで。
次からいよいよ、具体的にポケモンと生物を比較してみます。
考察が美しくはまったときの感動。
生物の面白さとポケモンの奥深さ。
そういったものを、発見者の私がコッソリひとりじめしてニヤニヤするのもいいですが、ぜひとも読者と共有したいと思っています。
平日は普通に仕事をしていますから、投稿頻度はマボロシ島レベルになるかもしれませんが、ゆるりと頑張っていきます。
これから先、書いていきたいなぁと思っているラインナップです。
「ニャオハ立つな の生物学的 ~ニャローテの足を観察しよう~」
「バッフロンって、実はバッイソンなのでは?」
「踊る!泳ぐ!武器を持つ!イタチ科ポケモン大集合」
「エンニュートのモチーフはイモリです(ヤモリ)※トカゲ ただしサンショウウオ」
「なんでケガニのポケモンが2種類もいるんだよ」
「殻と甲羅は何が違うの!?ホターテ、キレそう!」
「げんしのちからってすげー! ~骨とアンモとシダとホタテ~」
「ころがる ポケモン界最強火力の代償」
さぁ、ポケモンと生物の、
同じところ、
似ているところ、
違うところを探す、宝探しに出かけましょう!