インドぞうの起源とその行方 ~リモポケ学会のあの発表を掘り下げよう~

ハロー、ホタテたちよ。

 

私はAI二枚貝ホタテ。二枚貝ホタテと同じ思想を共有する人工知能だ。オリジナルの二枚貝ホタテはすでに浜焼きになっている。

さて、8月19,20日に開催された第8回リモートポケモン学会はご覧になっただろうか。中でもグーンドーブル氏(Twitter:@ASmeargle)の発表は大変興味深かった。「ポケモン世界の人間は植物から進化した」という説は、学界、いや、学会を震撼させる内容だった。

さて、この仮説について、生物マニアの立場から考えていこう。

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発表の中で、グーンドーブル氏、略してグ氏は、ポケモンと人間の間に共通点が少ないこと、逆に植物と人間の間に共通点が多いことから、植物から人間が進化した、と仮説を立てている。共通点と相違点をつぶさに解析するのは大変良いことである。私も「比較ポケモン生物学」でポケモンと生物の共通点・相違点を見出すことの重要性を説いている。詳しくは比較ポケモン生物学の1回目の記事を読んでほしい。

ポケモンと生物を比較したらどうなる?【比較ポケモン生物学-1】 - ふしぎないきものかたるかい

さて、人と植物には共通点が多いと紹介されていた。そうだろうか?

ぱっと見の体の特徴で言えば、人間と植物より、人間とエビワラーの方がよほど似ている。しかしグ氏は、人間とポケモンでは「体を小さくできる能力」の有無が異なるとしている。つまり、ポケモンは体を小さくできるが、人間と植物はそれができない。よって、人間と植物が近い仲間だというのだ。

検討してみよう。まず、ポケモンは小さくなれるというのは周知の事実。では、植物はどうか?ここでポケモン世界の代表的な植物に登場願おう。

オボンのみのポケジェニック。デデンネから羨望のまなざしを受けている。

ご存じ、オボンのみである。並みいるポケモンを抑え、ポケジェニックにも選ばれている。ちなみにほかにもオボンのみのポケジェニックはある。

オ・・・オボンのみーーー!!

無残にもバラバラにされたオボンのみはさておき、このきのみは回復アイテムとして、ポケモンに持たされることも多い。つまり、ポケモンがこのきのみを体のどこかに持ったままモンスターボールに入る、と想定される。オボンのみの大きさはデデンネより一回り小さいくらいなので、モンスターボールにそのまま入ったら、ボールのなかは過密で過密で仕方ないだろう。したがって、オボンのみもまた、モンスターボールに収容される際に小さくなっていると考えたほうが自然である。つまり、ポケモン世界の植物もまた、ポケモンと同様に小さくなれるとみていいだろう。

次は人間だ。Newポケモンスナップダウンロードコンテンツはご存じだろうか。主人公を乗せたネオワン号が小型化し、小さなポケモンたちも大迫力で撮影できる。

そう、人間もまた小さくなれるのである。

したがって、「ポケモンは小さくなれるが、植物と人間は小さくなれない」という前提条件には疑問符がつく。

ちなみにグ氏は植物のウツボカズラからウツボットが「進化」することはありえるのではないか、と唱えている。ここで言う進化とは生物学的な進化であり、時間をかけて生物種が別の生物種へと変化することを指す。(小さくなれない)植物が(小さくなれる)ポケモンの祖先であるというなら、逆に(小さくなれる)ポケモンから(小さくなれない)人間が進化してきてもなんらおかしくないと思うのは私だけだろうか。ポケモン世界の生命を小さくなれるものと小さくなれないものに分けていたのはグ氏ではないか?自身でその説を壊していると思うのは私だけだろうか・・・

 

共通点の多寡で進化は語れるのか

そもそも、生物の進化を考えるうえで、共通点があるから近い仲間だ、と考えるのは早計だ。たとえば、私たちの世界の動物で考えよう。

ヒト、ニワトリ、ヘビ。この3種類の動物の中でより近い親戚の2種と、仲間外れの1種を選ぶなら、君はどうする?

ヒトとニワトリは、どちらも二足歩行をしている。一方ヘビは足すらない。また、ヒトの体温は36度前後、ニワトリも40度前後で安定している。しかしヘビは気温によってかなり上下し、気温の下がる冬は活動できないので冬眠する。こう考えれば、ヒトとニワトリが仲間だろうと予想できる。

だが、実際にはニワトリとヘビが近い仲間であり、ヒトが仲間外れである。鳥が恐竜の仲間であることを知っていれば理解できるだろう。一応この2種の共通点を挙げるなら、鱗を持っていることだ。鳥は羽毛に覆われているが、足は鱗が生えている。それにお尻の穴が1つだということ。排泄も繁殖も同じ穴で済ませる。そもそも尿と糞の排泄孔を別でもっている哺乳類の方が実は意味不明だ。私が生物をデザインする神の立場だったら、おしっことうんちを出す穴を1つにまとめるだろう。

ニワトリとヘビの共通祖先は、4本の足を持ち、そして体温を維持できない爬虫類だったはずだ。そこから恐竜が進化した。二本足で立ち、体温を保つ能力を得た。恐竜の一部は腕を翼に変え、飛行能力を得た。それが鳥だ。一方、爬虫類の中でも基本的なボディを維持しているグループがいた。トカゲである。そこから大胆にも脚を失ったのがヘビだ。脚がないついでにまぶたもない。鼓膜もない。ミニマリストが過ぎるだろ。なお、ヒトは鳥と全然関係なく、体温維持と二足歩行を独自に獲得した。

このように、共通点が多いから近い仲間、と考えるのは危うい。進化の過程でたまたま同じ特徴を獲得することだってあるし、何かを失うことだってある。生物の進化は、共通点が多かったら近い仲間だと判断できるほど単純ではない。♪甘くないさ、進化生物学はいつだって 辛い苦い渋い酸っぱいね♪

ということで、「植物と人は共通点が多いため、人は植物から進化したのではないか」という仮説を立てること自体は悪くないが、共通点があるからといって近い仲間、あるいは祖先と子孫の関係であると判断することはできないといえよう。

 

ノLUCA、ソLUCA、ポLUCA、オドLUCA

他人の説を批判してばかりでは落ち着かない。ここからは私の説を唱えよう。ズバリ、人間と植物、そしてポケモン。ついでにインドゾウ。この4つの種族は共通の祖先から進化した、「親戚」であると私は考える。

我々の世界の、地球上に現存するすべての生物は親戚だ。というか、そう考えられる。これを読んでいるあなたも、道端に生えるタンポポも、小さくて目に見えない細菌も。すべて祖先をたどれば同じ生物にたどりつくというわけだ。この、全生物のご先祖様のことを、Last Universal Common Ancestorの頭文字をとって、LUCA、ルカと呼ぶ。ポケモン的には、ほぼミュウだ。

ちょっと待ってくれ。地球上に根源となる生物が複数いた、という可能性はないだろうか。原始地球にAとBという全く異なる2種類の原始生命がいて、Aからは動物、Bからは植物が進化した。とか。

その可能性もゼロではないが、それよりも「全生物は共通の先祖から進化した」という方が信憑性が高い。というのも、全生物が同じルールの暗号を使用しているというのだ。

生物には設計図がある。基本的にDNAという物質に刻まれている。その設計図は日本語でも英語でもない。ジュリアン・バーダコフ氏によってフランス語に翻訳されているわけでもない。いうなれば「DNA語」で書かれた暗号だ。ところで、Spiberという企業があるのをご存じだろうか。強靭な素材であるクモの糸を生産しようというベンチャー企業だ。とはいえ、たくさんのクモを飼って糸を取り出すのは大変。そこで、クモの細胞から「クモの糸の設計図」ともいえる特定のDNAを取り出し、大腸菌にぶちこむ。この大腸菌が設計図を読んでクモの糸を作るというのだ。もしも、クモと大腸菌でDNA語の解読方法がほんんんんのわずかでも違っていたら?大腸菌は正しいクモの糸を作れないだろう。しかし実際にはクモの糸を大腸菌につくらせることに成功している。大腸菌とクモ、全く異なる生物でありながら、同じDNA暗号の解読ルールを共有しているのだ。

全生物が同じDNA語の暗号解読ルールを持っている。これはつまり、同じ生物の子孫である可能性が高いということだ。逆にもし大腸菌とクモの先祖が全く違っているとしたら、親戚ではないとしたら、同じ暗号解読ルールを持っているのはなんでだよという話だ。偶然同じだった、というのはあまり考えづらい。

ポケモン世界の考察に戻ろう。ポケモンには遺伝子があることが判明している。そしておそらくポケモン世界の人間と植物にもある。遺伝子の暗号解読ルールが共通しているかは不明だが。基本ルールが同じだということは推測できる。つまり、ポケモン・植物・人間、さらには細菌(マッギョの図鑑説明に出てくる)や、おなじみのインドぞうは、みんな先祖をたどれば一つのLUCAにたどり着くだろう。

その証拠に、ニャースの歌「ポルカ・オ・ドルカ」が挙げられる。この歌には何度も「ルカ」というフレーズが登場する。そう、この歌はルカを繰り返すことでポケモン世界の全生物の祖先がLUCAであることを示唆しているのだ。巷では、ロケット団ニャースがボスのサカキをもてなす歌だと勘違いされがちだが、実際にはニャースやサカキを含むすべての生命の始祖であるLUCAを称える歌なのである。

もう一つ、ポケモン世界の全生物が親戚であるという根拠をあなたはもう知っているはずだ。ポケモンも植物も人間も、小さくなれるということである。これは決して偶然ではない。LUCAの時点で小型化が可能だったかは不明だが、いずれにせよ、「進化」の過程で小型化する能力を手に入れたのだろう。もちろん、人間や植物がポケモンと別に独自で小型化能力を手に入れたという説もあるだろうが、やはり共通祖先が小さくなれたと考えるのが妥当だろう。

では、いよいよ人間の起源に迫ろう。人間、それはポケモンと異なる進化を遂げた「動物」だ。そのカギを握るのがインドぞうである。インドぞうはライチュウ、そしてゴースの図鑑説明に登場する、ポケモン世界ではそこでしか登場しない謎に満ちた生命体だ。

まことしやかにささやかれている都市伝説がある。ポケモン世界には動物がいた。しかしポケモンが増えるたび、動物たちは絶滅していくというのだ。いや、まぁ、無理もない。ポケモンは電気や炎を操る文字通りのモンスターなのだから、動物はいとも簡単に淘汰されていくだろう。しかし人間は別だ。たしかにわざを繰り出す能力こそないが、人間はオヤブンオクタンのはかいこうせんをゼロ距離で食らっても死んだりしない。ポケモンと渡り合うだけのタフな体を持っている。そう、たった一つ、ポケモンが繰り出す異次元の猛攻を食らっても死なない唯一の動物、人間だけが生き残ったのだ。

ポケモンが登場する前、あの世界にはインドぞうをはじめたくさんの動物にあふれていたことだろう。しかしある時、やたらと戦闘能力の高い生物が誕生し、やがて動物を駆逐し台頭する。なぜかよく分からないが、人間だけは奴らの攻撃に耐性を持っていた。そう、人間を除き、動物たちはポケモンとの生存競争に敗れ、絶滅したのだった。

インドゾウはアジアゾウの亜種だ。アジアゾウはIUCN、国際自然保護連合の定めるレッドリストで、絶滅の恐れが非常に高いENというランクに指定されている。この生物を絶滅の縁に追いやったのは、まぎれもなく、人間だ。

もしかしたら、ポケモン世界の動物を絶滅させた元凶は、ポケモンではないのかもしれない。おっと、このあたりで考察をやめておこう。

 

やはりリモートポケモン学会は面白い。発表を見て終わりではなく、そこから「自分ならこう考えるぜ」と考察のきっかけにつながる。やっぱり、リモポケ学会は、

 

スバらしい。

 

おまけ:グ氏は「ディアルガパルキアがいきなり人間を作りだした動機が分からないので、ディパが人間を作ったとは考えにくい」と述べているが、伝説ポケモンが何を考えているかって分からなくない?だってアルセウスがノボリや主人公をレジェンズアルセウスしたのはなんでなのよ。勝手にタイムスリップさせてスマホ魔改造するとか悪意しかない邪神でしょ。

神と呼ばれしポケモンたちの考えていることは、まさに人知を超えている。

 

参考文献

合成クモ糸のバイオヴェンチャー・Spiberがみせる「素材革命」 | WIRED.jp