「鳥は恐竜」を考える ~第1章 大きい分類 小さい分類 そんなの人の勝手~

こんにちは。ただの動物好き、二枚貝ホタテです。

 

昨今、鳥は恐竜だ!いや、恐竜じゃない!という話題をたまに見かけます。

 

たとえば、環境系エンターテイナー、WoWキツネザルさんの投稿。鳥は恐竜です!と断言しています。

一方、この次の日にはこんなツイートが。

フジツボ研究者のかめふじさんのツイート。鳥は恐竜の一部から派生した生物です!と表現を変えていますね。つまり鳥は恐竜ではないと言えます。

さらにその次の日のWoWキツネザルさんのツイートがこちら。

表現がよくなかったとして謝罪しています。

うーん、結局鳥は恐竜なのか?恐竜じゃないのか?これは一言でズバッと説明できる内容ではありません。ある見方をすれば鳥は恐竜といえなくもないし、でも別の見方なら鳥は恐竜に含まれない・・・ということで、自分は生物学者でもなんでもない動物マニアですが、この問題に自分なりの答えを出したいと思います。

 

生き物、ちょっと多すぎるから整理しようぜ!

 

スウェーデンの植物学者、カール・フォン・リンネは分類学の祖ともいわれています。彼は生物を仲間に分けて整理する、つまり分類するという方法を確立しました。その仕組みは、彼の名をとって「リンネ式階層分類体系」と呼ばれています。

実はこれ、あるものに似ています。それは住所。

例えば国立科学博物館上野本館の住所は 東京都台東区上野公園 7-20 です。注目してほしいのは、東京都>台東区>上野公園ということ。まずは大きなくくりである都道府県。次に、その中の市区町村区。さらにその中にある細かい場所。という風に、住所はだんだん狭まっていきます。最初は大きなグループから始まり、その中にある小さなグループ、さらにその中のもっと小さなグループ、と階層を作るように整理しています。グループの中に小グループがいっぱいある、というのを繰り返す構造です。

リンネ式階層分類体系も同様です。例えばヒトの分類は 動物界 脊椎動物門 哺乳綱 霊長目 ヒト科 ヒト属 ヒト です。最初は「動物」というデカいグループから始まり、徐々に小さいグループに狭めていき、最後はヒトというたった一種にたどりつきます。住所でいう都道府県や市区町村みたいに、生物においては界、門、綱、目、科、属、種を使います。これこそ、生物の分類の最重要な方法なのです。

さて、生物の分類は、どのような基準で分けているのでしょうか。先ほど住所の例を出しましたね。例えば、多摩川という川によって、東京都と神奈川県の境目が設定されています。多摩川に行って「あそこに川が流れている。そうですよね?」といえば、だれから見ても、どの動物から見ても、なんなら宇宙人から見ても疑いの余地がない事実です。では、「あの川で東京都と神奈川県が分けられてる。そうですよね?」と言ったら?これは日本政府が土地を勝手にそう分けているだけですから、宇宙人から見たら「知らねぇよ。人間がそう分けてるだけで、別に自然の摂理でもなんでもないだろ。あっちの鶴見川で分けたっていいじゃない」と思う、かもしれません。宇宙から国境は見えない、なんて言葉もありますよね。別に、どこで県を分けなくちゃいけない!というルールはないのです。

さて、カラスが飛ぶのは自然の摂理です。人から見てもカラスからしても、カラスは飛びます。人はこのカラスという生き物を「スズメ目」というグループに入れています。でも、カラスに「あなたはスズメ目ですよね?」と聞いたって、カラスからしたら知ったことではありません。人が勝手にスズメ目というグループを作って、そこにカラスを入れているだけなのです。

 

理不尽な分類?無脊椎動物

分類は、あくまで人が生き物を整理しやすいように分けているだけです。だから人間中心で考えています。ここでは無脊椎動物という概念について考えてみましょう。大多数の動物は背骨を持ちません。しかし人間は、自分たちが背骨を持つからという理由で、動物を背骨がある仲間とそれ以外に分けたのです。

え?「背骨がある仲間」と「背骨がない仲間」に分けたんじゃないか、って?

私に言わせれば、動物を脊椎動物無脊椎動物に分けるというのは、あらゆる企業をファミレスとファミレス以外に分ける、とか、日本人を群馬県民と群馬県民以外に分ける、みたいなものです。実質ローランド。

そもそも無脊椎動物の方が多くて、昔からいます。動物の世界の主流であり源流です。そのごく一部が脊椎動物に進化したわけです。種数でいえば無脊椎動物の方が多いし、なんなら、巻貝だけでも脊椎動物全体より多いと思います。

 

さて、あなたはちょっと変わった寿司屋、分類ずしにやってきました。

「へいらっしゃい!うちは分類ずしだよ。今から5種の寿司を出すから、お客さんはその寿司ネタの生物を2つのグループに分けてくれ。もし大将が好きな分け方と同じだったら、大トロを一貫サービスするからさ。ちなみにうちの大将、生き物を分類するときは、その生き物の進化の歴史を大切にするらしいよ。」

そしてあなたの前には

ヒラメ、サーモン、ウニ、ホタテ、アマエビ

の5貫と、2枚の皿が運ばれてきました。

さぁ、あなたはどんな風に2つのグループに分けますか?

 

 

 

~シンキング・タイム~

 

 

 

 

大将を喜ばせる分類、それは・・・

 

 

 

【ヒラメ・サーモン・ウニ】 と 【ホタテ・アマエビ】

です。どうでしょう、大トロは手に入りましたか?

多分、生物学を学んでいない方なら、ヒラメ・サーモンを魚、ウニ・ホタテ・アマエビを魚ではない生き物、と分けるでしょう。

しかし進化の歴史を考えると、違った分類が見えてきます。

まず、動物の中でも原始的な特徴を残すとされるクラゲなどは、口と肛門が同じ穴です。すみません、寿司食ってるときに肛門とか言って。分類ずしはこういうお店なんで許してください。

魚も人も、ウニも貝もエビだって、口と肛門が分かれている動物ですね。でもって、どの動物も一番最初は球体の授精卵からスタートします。細胞分裂して成長する中で、ある時、球体にへこみができてきます。この最初にできるへこみを原腸といい、開いた穴を原口といいます。貝やエビは、成長すると原口が口になります。先に口ができるので、前口動物といいます。一方、脊椎動物やウニの原口は肛門になり、そのあと口ができます。あとで口ができるので、後口動物といいます。

つまりこう考えられます。今から何億年も昔、2つのグループが誕生しました。片方は、先に口を作る動物A。やがてこの動物Aが、貝やエビに進化します。もう片方は先に肛門を作る動物B。このBが、魚やウニに進化するのです。だから、さっきの5つの寿司ネタを分けるとき、進化の歴史に沿って考えると、ヒラメ・サーモン・ウニの後口動物と、ホタテ・アマエビの前口動物に分けられるのです。

 

さて、脊椎動物は後口動物の中の一グループで、それ以外が無脊椎動物です。というと、無脊椎動物にはどんな動物が入るでしょうか?

・口と肛門が分かれていない動物(クラゲなど)

・前口動物(貝など)

・後口動物から脊椎動物を除いたもの(ウニなど)

無脊椎動物に入るわけです。なんか雑な気がしませんか?

 

無脊椎動物という分類は、人間が、人間中心で動物を整理した結果生まれたものです。けっこう傲慢な行為だと思います。しかし、それが悪いことかといえば、答えはNOです。

だって、分類は人間がやっていること。人間が勝手に生物の間に境界線を引いて、人間のために整理しているのです。だから人間にとって使い勝手がいいかどうか、それこそ最重要事項なのです。絶対に進化の歴史に合わせた分類でなければならないというルールはないのですから。いや、実をいうと、進化の歴史に合わせた分類を尊重する考え方もあるんですけど、その話はやめておきますね。

 

結論:そもそも生物に正しい分類などというものはない。人間が整理しやすいように勝手に分けているだけである。

 

おい!恐竜と鳥はいつ出てくるんだ!

ということで第2章では恐竜と鳥の進化の歴史、そして人間がその2つの生物をどう分類してきたかを考えます。

 

 

参考文献

利用案内・情報 ≫ アクセス・利用案内 :: 国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo

 

diamond.jp