古代は巨大!?パラドックスポケモンの大きさを考察前編【比較ポケモン生物学-2】

みなのもの、おはこんハロチャオ!

あなたの目玉をシェルブレード! 二枚貝ホタテです。

 

ポケットモンスター、縮めてポケモン

様々な楽しみ方があるこの巨大コンテンツ。なかには、このポケモンの世界を解析することに面白さを見出した人々がいます。

物理学、生物学、社会学、音声学、増田学など。各々の得意とする武器を使い、様々な切り口からポケモンの世界を解明して楽しんでいます。そんなポケモンマニアが集まるイベント、それがリモートポケモン学会です。ということで、3回連続でリポ学の記事ですね。開催から1か月もたったというのにまだこすります。なんなら3回シリーズでやるので、あと2回こすります。

 

第6回リモートポケモン学会2日目4番目の発表である

永夜 藤月さん @Nagaya_Tougetsu の『パラドックスポケモンの正体に迫る!』

www.youtube.com

こちらの個別アーカイブで13:30くらいのスライドにこんな記載がありました。

古代の大型化(現実世界)

現実世界でも、古生代中生代の生物は大型化していた

例:メガネウラ(世界最大の昆虫)

 

 

・・・本当に、現実世界の古代生物は大型化していたと言っていいのでしょうか?

 

私の考えはこうです。

古代の生き物には、大きいものもいたし、小さいものもいたし、普通のサイズのものもいた。ただ、大きいものが注目を集めやすかったり、インパクトが強く記憶に残りやすいといったバイアスがかかる。

 

では、絶滅した過去の生き物たちを見ていきましょう。

ポケモンSVのカギを握る存在である、ドンファン・イダイナキバ・テツノワダチ。

たかだかレベル20前後でテツノワダチに挑み、芸術的な6タテを食らったのは自分だけではないでしょう。ぴえん超えてぱおん超えてウィ・ルドン・ファー。

そんなイダイナキバにちなんで、古代のゾウのサイズを考えてみます。

大きかった?小さかった?多様な古代生物

ゴースに包まれると2秒で倒れることでおなじみインドゾウなど、現代のゾウは陸上動物最大級のデカさ。じゃあ、ゾウのご先祖様はもっと大きかった・・・とも限りません。ゾウの祖先に近いとされる古生物、モエリテリウム(メリテリウム)やフィオミアは、現代のゾウより小型です。また、進化の過程で小型化したゾウもいました。インドネシアフローレス島にいたピグミーステゴドンなどがいい例です。

古代のゾウはみんな小さかったのか?いいえ、大きいゾウもいました。

史上最大のマンモスといわれる、松花江マンモス。ミュージアムパーク茨城県自然博物館に展示されています。アフリカで発掘され「恐ろしい獣」と名付けられたデイノテリウムは、なぜかキバが下あごから首元に向かって生えています。松花江マンモスやデイノテリウムは現存するゾウよりも大型です。

当然、今のゾウと同じくらいのサイズのゾウだってたくさんいたことでしょう。

 

リポ学で永夜氏が例として出した昆虫はどうでしょう?

たしかに、史上最大の昆虫といわれるメガネウラやメガネウロプシス、パレオディクティオプテラは、今から大体3億年くらい前、古生代石炭紀という時代に生きていました。たまに間違われるのですが、恐竜が生きていた中生代とは別、もっともっと前の時代です。

昆虫は肺をもたず、気管という器官を使って呼吸しています。残念なことに体が大きいと、気管では酸素を体中に届けられないのです。しかし、石炭紀は酸素濃度が30%ほど、つまり今より高かったとされ、昆虫が大型化できたといわれています。ネットで「石炭紀 昆虫」と検索してもヒットするのは大きい虫ばかり。でも、それは昆虫が全員大型化したということではありません。Wikipediaで「Category:Pennsylvanian insects」と調べてみましょう。ペンシルバニアンっていうのは、石炭紀の後半のことです。

Category:Pennsylvanian insects - Wikipedia

2023年3月1日現在、掲載されている項目はメガネウラを含め9つ。そのひとつ、archimylacrisは2~3cmと記されています。そう、探せばいるのです。石炭紀の小さな昆虫は。

 

そもそも、古代と現代では、古代の方が長い。

ざっくりですが、仮に古代を「5億年前からスタートし、現代を抜いたもの」、現代を「最近1万年」と定義します。この時、古代は499,990,000年、現代は10,000年あるわけで、古代の期間は現代の49,999倍も長いことになります。

(定義の理由は、カンブリア紀が大体5億年前であること、人類が農業を開始したのが約1万年前とされているため。)

そんなに長ければ、多様な環境がありました。

虫にとって大型化に適した環境。魚にとって大型化に適した環境。爬虫類にとって大型化に(略)。鳥類にとって(略)。哺乳類に(略)。

長い時代があれば、多様な環境があった。多様な環境があれば、多様な生き物いた。多様な生き物がいれば、大きいやつもいた。ということです。メガネウラが飛ぶ同じ空には小さい虫も飛んでいたし、ティラノサウルスが闊歩した森にはちっちゃい恐竜もいたのです。

 

大きい生物にかかる諸々のバイアス

生物の特徴について語るとき、人気があるかどうか、本やテレビで紹介されやすいかどうか、人の記憶に残りやすいかどうか・・・など、バイアスに慎重にならないといけません。

例えば、あなたの家の近くにA,B,Cという3つの博物館があったとして、それぞれが特別展を開催するとします。

A【史上最大の恐竜がやってくる!巨大恐竜展】

B【史上最小の恐竜がやってくる!極小恐竜展】

C【普通な大きさの恐竜がやってくる!普通恐竜展】

皆さんはどれに行きたいですか?

個人的には普通恐竜展が見たいですね。普通な恐竜ってなんだよ、っていう。

ただ、一番人気なのは巨大恐竜展でしょう。だってデカい恐竜見たいじゃん。かっこよくて、強そうで、大迫力の恐竜が見たいじゃん。

巨大な生物は目を引きます。人々の感情を強く揺さぶります。人気があります。図鑑や博物館で紹介される機会が多く、目玉として大々的に扱われます。記憶に残りやすいです。

だからこそ、「〇〇の生物は大きい」とか、ついでにいうと「〇〇の生物は美しい/強い」みたいな文言は慎重に考えるべきです。

本当は小さいやつとか地味なやつもいるのでは?自分が知らないだけでは?と、一度ブレーキをかけて冷静になるべきだと思います。

 

さて、永夜氏の発表では、古代パラドックスポケモンが大型化した理由として、酸素濃度が高かったこと、そして豊富な餌を必要とした巨大ポケモン同士の競争により大型化が加速したことが原因であると推測しています。

謎に包まれた存在であるパラドックスポケモンを解明するために生物学のエッセンスを使うとは、いい着眼点ですね。素人質問で大変恐縮なのですが、巨大化の原因として、ベルクマンの法則や逆ベルクマンの法則、フォスターの法則については検証されたのでしょうか。また、酸素のほかに温室効果ガスや湿度といった要因は考えられるでしょうか。昆虫の大型化が酸素濃度の上昇に起因するためポケモンの大型化も酸素濃度の上昇に起因するとのことですが、昆虫はガス交換システムが大型化に適さないため酸素濃度が上昇したことが大型化につながったと考えられています。ポケモンのガス交換システムについて、現代の酸素濃度では大型化できない、といった先行研究などがあるのでしょうか。また、古代パラドックスポケモンはひざしがつよい時に能力が上昇するわけですが、太陽と大型化の関係についてはどのようにお考えでしょうか。。。

 

ここからは比較ポケモン生物学の出番です。

 

次回、中編では、古代パラドックスポケモンが巨大化した理由に迫るため、動物の大きさについて考えます。

お楽しみに~

 

 

おまけ

科博で開催されていた、特別展「化石ハンター展」。そこで展示されていた、とある恐竜の標本を見た親子連れがこんなことを言っていました。

子供「小さいね。」

親「まだ赤ちゃんなのかも。」

 

なぜ2人は子供だと思ったのでしょう。

 

化石ハンター展に展示されていたベロキラプトルのレプリカ

恐竜の名は、ベロキラプトル。

映画『ジュラシック・ワールド』シリーズで登場し、主人公オーウェンと一緒に行動する恐竜です。作中では、人間より大きな図体をしていますが、実際には柴犬と戦ったら負けるんじゃないかってくらい小さい恐竜。実はジュラシックワールドのベロキラプトルは大きさを盛ってるんですね。かなり。

 

私たちに強く植え付けられた、「恐竜は大きい」というイメージ。それを実感する出来事でした。

 

参考文献

ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版サイト
古代の昆虫、巨大化の謎に新説
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/4702/